シナジーマーケティング(以下、当社)が運営する技術ブログ「TECHSCORE BLOG(テックスコア ブログ)」は、今年でサイト開設24年目を迎えました。
サイトを開設した2001年は、パソコンが一般家庭に普及しはじめ(所有率50%程度)、カメラ付き携帯電話が初めて日本で発売された「IT黎明期」ともいえる時代。その時代にリファレンスサイトとして産声をあげ、2012年にブログ形態に変更、2020年にはさらなるリニューアルを行うなど、姿を変えながらも24年間途切れることなく技術情報を発信し続けています。
今回は、「TECHSCORE BLOG」の歴史を振り返りながら、ブログを通じて世の中に提供したい価値や届けたい想いについて、立ち上げメンバーである馬場さん、現在ブログの運用を担当している東さん、河野さん、室さんに語っていただきました。
(取材・編集/シナジーマーケティング ブランドマネジメントチーム)
プロフィール
馬場 彩子 / 取締役 兼 CTO
2001年に四次元データ(現シナジーマーケティング)に入社。クラウド型CRMシステム「Synergy!」の初期から開発に携わったのち、2011年より研究開発グループに所属、2020年1月にCTOに就任。エンジニア、開発チームの立場から事業推進に貢献している。
東 優 / プロダクト開発部 第6プロダクト開発G
2011年入社。iNSIGHTBOX、メール広告配信サービス、en-chantと主に「Synergy!」以外の開発に従事。現在は生成AIに興味津々。
河野 健太朗 / プロダクト開発部 第6プロダクト開発G
2012年入社。SI(システムインテグレーション)や「Synergy!」の開発に携わった後、現在はメール広告配信サービスの開発リーダーを務めている。
室 海七大 / プロダクト開発部 第3プロダクト開発G
2022年新卒入社。「Synergy! 」の一部機能の保守やSI(システムインテグレーション)の開発・保守に携わっている。
演奏家にとっての楽譜のように、エンジニアにとっての指針になるサイト
―― TECHSCORE BLOGの前身である「TECHSCORE」は、2001年に誕生しました。誕生のきっかけを教えてください。
馬場:
当社の前身である株式会社四次元データ*1 在籍時に社内研修の一環として作成していた技術資料を、せっかくだからとサイト上で公開したのが始まりです。研修用の資料といっても教材ではなくて。「学んだ技術の復習も兼ねて、自分でアウトプットしたものを仲間の前で発表する」といった研修方法だったので、発表時に使用する資料を指します。
このような経緯から、結果的に、エンジニアがプログラムを書くときに参照するリファレンスサイトになりました。
―― サイト名の「SCORE」の由来は、点数でしょうか。
馬場:
点数ではなく、「楽譜」ですね。サイト名にあわせて、ロゴもト音記号にしました。音楽家が演奏するときの指針として楽譜を見るように、エンジニアにもプログラムを書くときの指針として見てもらえたら、という想いが込められています。
1 2001年設立。当社の前身にあたる企業のひとつ。詳細は企業サイトの沿革を参照のこと。
―― エンジニア界隈、特にJava界隈では、大変認知度の高いサイトだと伺っています。
馬場:
当時は他に似たようなサイトがなかったこともあって、かなり反響がありましたね。2004年には、「TECHSCOREの月間PVが数百万に到達した」というニュース記事が出たのを覚えています。
実際に現場で手を動かした成果を掲載しており、実用性が高かったことが反響に結びついたのかもしれませんね。運営の立場ではありますが、私自身、入社するまではプログラムを書いたことがなく、「プログラムを書いてはTECHSCOREの記事を書いて学び、また学んではプログラムを書く」の流れを繰り返すことで、大変勉強になりました。
―― つい先日も、当社のエンジニアがTECHSCOREを参考にプログラムを書いていたと聞いています。
馬場:
そうなの?(笑)24年経っても現役だ。サイトを作った甲斐がありましたね。
リファレンスサイトからブログ形態に移行しても変わらぬ、情報発信への想い
―― サイト開設から11年が経った2012年に、サイトの形態がブログへと変更になりました。
河野:
エンジニアがライトな内容を気軽にアウトプットができる環境に変えるべく、同じチームだった寺岡さんとも相談して、ブログ形態を選択しました。リファレンスではなく、物語性のある記事が増えることで、「ブランディングやエンジニアの採用活動」「ノウハウ・事例の公開による技術的貢献」「継続的な情報発信を行うための体制作り」などを実現できるのではないかと考えたためです。2012年は技術ブログの黎明期で、次々と新しいブログが開設されていたことも理由の一つですね。
ブログになったことで、サイト名も「TECHSCORE BLOG」に変更しました。運営は4名程で、執筆は社内の有志エンジニアが担当していました。「エンジニアが考えていることを、気軽にアウトプットしたい」という意図が大きかったので、記事のテーマは執筆者のほうで好きに決めてもらうスタイルでした。そのため、エンジニア個人の技術的関心事項がサイトの軸になっていましたね。
TECHSCORE時代の知名度の恩恵もあり、引き続き反響はよかったですね。Rubyを開発したまつもとゆきひろ氏が2、3回程度うちの記事を取り上げてくれて、PVが大きく跳ねたことをよく覚えています。
―― ブログ形態に変わってから8年が経過し、2020年4月に2度目のリニューアルを迎えます。
馬場:
当社の主力製品である「Synergy!」のファーストリリースは2005年でした。そこから約15年が経過した今、プロダクトをゼロイチで作ったり、長期運用する上で乗り越えた葛藤・障壁などを発信することで、日本のエンジニアリングに貢献できるのではないか、と考えたことがきっかけです。
運営メンバーから、「Tips的な記事は増えた一方で、大規模プロジェクトや長期的な目線でのシステム設計にまつわる物語性の高い記事が少ないので、そこを強化したい」という意見が上がったことも大きいですね。
河野:
そういった意図があったので、リニューアル直後の2020年から2021年にかけては、私たち運営側で執筆者をアサインして、手掛けているプロジェクトに関する記事を書いてもらう方法で進めていました。狙い通り、物語性の高い良質な記事を出せるようになった一方で、記事本数の減少や執筆者の負担増大という問題が出てきました。
定期的に発信し続けることが重要だと考えているので、2022年からは、リニューアル前の「ライトな内容を気軽にアウトプットする」方針に再転換しました。あわせて、「業務日報の代わりに、ブログの記事を執筆する」という位置付けにしたことで、現在執筆者は50名程度まで増え、比例して記事本数も増加しました。
―― 試行錯誤されているのですね。2020年のリニューアルから4年が経ちましたが、現在どのくらい日本のエンジニアリングに貢献できていると考えていますか。
馬場:
当社に所属しているエンジニア全員が業務のなかで得たスキルや気づきをコンスタントに発信できているので、ある程度の貢献はできていると考えています。長期運用しているプロダクトをより進化させるための開発思考や手法などにまつわる発信は当社ならではで、一定価値があるのではないでしょうか。また、トラブル事例や失敗事例などの普段なかなか表に出てこない情報も公開しているので、転ばぬ先の杖として一定活用してもらえているのではないかと推察しています。
一方で、長期的な取り組みやまだ思考段階の取り組み、最先端技術を活用した開発などを発信できていない点は課題だと認識しています。生成AI系の取り組みもそろそろ発信したいよね。
東:
ですね。この場合は、指名して書いてもらうほうがいいかな……。会社や運営として書いてほしいテーマと執筆者が書きたいテーマの二軸があるなかで、今はテーマの選定を執筆者に委ねているので、優先度高く発信したい事柄があった際に「誰に、どのテーマで執筆を依頼するべきか」が悩ましい。この点は課題だと思っています。あわせて、ブログの運営や執筆と並行して通常業務もあるので、記事作成にかかる工数をいかにして圧縮するかも考えていかないといけませんね。
河野:
作業工数の話でいうと、記事のファクトチェックが重いですね。専門性の高い技術情報を発信しているのでファクトチェックは重要なのですが、運営7名に対して執筆者は50名弱と多いため、運営側だけですべての記事をチェックするのが困難な状況です。もちろん運営側でも最終チェックはしますが、基本的に執筆者が所属しているグループ内でチェックしてもらう体制を取っています。ファクトチェックを含む全体フローを今後さらに整理して省エネ化することで、質の高い記事の数も増やしていけたらと考えています。
―― 精力的にブログを更新されていますが、社内外からの反響や自身で実感している効果などはありますか。
東:
ブログ内に問い合わせボタンやコメント欄がないので、読者からの直接的な反響は調査できていません。これも課題のひとつだと考えています。一方で、採用面接の場や社内でコミュニケーションを取る際に、「どういった開発を、どんな人物が担当しているのか」といった基本的な情報はある程度提供できているように感じています。コミュニケーション面のハードルを一定下げる効果はあるんじゃないでしょうか。
馬場:
私もそれは感じていますね。あらかじめ会うことが決まっている方だと、私が書いたブログの記事を事前に読んできてくださるので、初対面でもコミュニケーションが取りやすい傾向にあります。また、採用面接の場面でも、「ブログを通して、私の考えをある程度理解した上で入社を希望されている」という前提があるので、一定の安心感があります。あの面接の短い時間で、私の考えをすべてお伝えすることは不可能なので。
東:
ブログの運営には特に若いメンバーに入ってもらっているんですが、室さんはブログに関して反響や効果を感じることはありますか?
室:
あります。ブログの運営を担当するようになってから、社内でのコミュニケーションが取りやすくなったと感じています。業務面では、執筆者の方々と記事のやりとりをしているおかげで、誰がどんな業務を担当しているのかが把握でき、困ったときに相談しやすくなりました。また、直接面識がない方とオフィスで会ったときも、これまでやりとりをしていた経緯があるので、気兼ねなく会話ができるようになりました。
スキル面では、ブログの記事を書いたことで、業務からさらに一歩踏み込んだところまで理解できるようになりましたね。記事の形で発信する際は正しい情報をわかりやすく伝える必要があるので、深掘りして調べたり、書く前に思考を整理するなど、大変勉強になりました。冒頭で馬場さんが紹介されていた四次元データの研修と同じ効果を実感しています。
東:
TECHSCORE時代の研修意図とその効果が、20年以上経った今でも有効かと思うと面白いですね。「記事を書くことで勉強になった」という声は他の執筆者からも聞かれていて、自己研鑽としても一定効果があると言えそうです。
■執筆を担当しているメンバーのコメント(一部)
- 記事としてまとめることで自分の知識を整理できるだけでなく、今まで知らなかったことを深く知ることができる良い機会になった。
- 記事を書く過程で、頭の中にだけにふんわり存在していた知識や見解を調査・熟慮することで、ブラッシュアップすることができた。
- 記事を書くことは大変ではあるが、社外に自分の伝えたいことを発信できる貴重な機会なので、「大変さ <<<< 貴重な機会」と捉えている。
IT業界の先駆者として、エンジニア業界の発展に寄与していく
―― 最後に、今後の取り組みについて教えてください。
馬場:
「エンジニア業界にインパクトを与えたい」というと大袈裟ですが(笑)。私たちはIT企業のなかでも老舗なので、あとから参入してきた方々が今後ぶちあたる壁に今まさに取り組んでいます。もちろん、私たちの時代と今の時代では違う点も多々あると思いますが、近しいところでスタックしてしまうこともあるはずです。今まで私たちが取り組んできた技術面・組織面における課題の乗り越え方を後続に伝えることで、エンジニア業界全体に良い影響を与えられるのではないか、と考えています。
「シナジーマーケティングは、創業から幾多の壁を乗り越えて、今また新しいことに挑戦している面白い会社なんですよ」と胸を張っていえる状態でありたいですね。そのためには、日々の業務に取り組むだけでなく、社内外問わず、コンスタントに情報発信をしていくことが重要です。「あの会社、面白そうなことをしているな」と興味を持ってもらうことが、第一歩なので。
東:
世の中に広く認知されるブログになるように、より工夫していきたいですね。せっかく書いても読まれないのはもったいないので(笑)。TECHSCORE BLOGは、「エンジニアの業務に有益な情報を提供することで業界発展に寄与すること」を重視しています。トレンドに乗っかってバズを狙うのではなく、「地に足がついた役立つ情報の発信を積み重ねていたら、いつの間にか認知度が上がっていた」となるのがベストだと思っています。
私たちが普段行っている業務から得られた知識を凝集したコンテンツこそが、私たちがどういったエンジニアリング集団であり、どういった問題を解決しようとしているのか、どういった技術特異点があるのか、といった情報を正確に伝えられるのではないでしょうか。
河野:
2012年にTECHSCORE BLOGが大きく盛りあがった時も、バズを狙ったトレンドネタの記事ではなく、地味ではありますが、日頃のエンジニア業務を支える技術的なTips記事が多かった。だからこそ、読者の皆さんに支持されたんじゃないかと思っています。こういった「実直さ」「質実剛健さ」がシナジーマーケティングのエンジニアの特徴ではないでしょうか。その良さが、ブログを通してうまく伝わるとうれしいですね。世の中に広く認知されるまでには時間がかかると思いますが、これからもブレることなく、現場の業務に役立つ情報をしっかり発信していきたいです。
室:
TECHSCORE BLOGには、技術的な記事だけでなく、プロダクトマネジメントをテーマにした記事などもあるので、エンジニアではない方にも見てもらえるように工夫したいです。また、よく馬場さんが社内外のイベントに出演された際の体験をブログなどに書かれているので、それを見習って、社内のエンジニアだけで実施するような小さなテックイベントもしっかり拾って、ブログで発信していけたらと考えています。
馬場:
そういえば、以前は、入社研修が終わったタイミングや年末などの節目にもみんなに記事を書いてもらっていたよね。今は、執筆者がテーマを決める形で運営しているけれど、年に3〜4本くらいは私たち運営側でテーマや執筆者を指定して書いてもらってもいいかもしれませんね。そうすれば、長期的な取り組みやまだ思考段階の取り組み、最先端技術を活用した取り組みなどの発信を増やすことにもつながりますし。
TECHSCORE BLOGは、エンジニア業界発展に寄与する情報発信を行うために、今なお試行錯誤を続けています。今後、またサイトの形態が変わることもあるかもしれませんが、現場のエンジニアにとって有益な情報を提供するサイトであり続けることだけは変わりません。
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