ファンマーケティングの成果は何で測る?スポーツ・地域の実践に学ぶ顧客との“関係の変化”

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当社は2026年10月、「顧客ロイヤルティ・ファン化施策の実態調査」の結果を発表しました。企業でマーケティングやCRM、ファンづくりの施策に関わる600名に、ファンづくりの重要性や、その効果をどのように測っているかを聞いた調査です。

この調査では、ファンづくりを重要だと考える人が7割を超えました。一方で、「お客様がファンになった」「関係が深まった」という状態を何で判断するかは、企業によってさまざまであることも見えてきました。重要だとわかりつつも、売上やリピート率以外の「愛着」や「関係の深まり」をどう捉えればよいか、迷いを感じている担当者の方も多いのではないでしょうか。

ここでは当調査結果の概要と、当社によるスポーツクラブおよび地域での支援・実践から、顧客との「関係の変化」の捉え方をご紹介します。

(編集/経営推進室 ブランドマネジメントチーム)

調査結果ハイライトより

1.76.7%が、顧客ロイヤルティ向上・ファンづくりを「重要」と認識
2.効果測定で最も活用されているのは「リピート率・継続率」47.2%。「ブランドへの愛着・共感度」は14.5%
3.「愛着や参加を測定できている」と回答した企業の76.9%(360名のうち277名)が、測定指標として「ブランドへの愛着・共感度」「コミュニティ・イベント参加率」のいずれも選択せず

Q10 ロイヤルティ・ファン化の効果測定に活用している指標(プレスリリースより)

調査によると、ファンづくりの効果は、購入や継続の数字を中心に測られています。愛着や参加を「測れている」と感じていても、何を見て判断しているかは企業によって幅があるようです。継続購入やLTVはあくまで「行動の結果」であり、愛着や参加はその手前にある「関係の途中経過」です。どの状態を変えたいかによって見るべき数字は異なります。お客様との関係がどう変化したのかを「自社なりの物差し」で捉える必要があると、調査結果のリリースは指摘しています。

リリース)「ファンになった」は何で判断する?企業600人調査で見えた、顧客との“関係の変化”を測る難しさ

スポーツクラブのCRM実践

当社の数多くの事例を紐解くと、その判断基準をつくるヒントは、スポーツクラブや地域の実践にありました。

スポーツクラブや地域は、「好き」「応援したい」という気持ちが関係の土台になる分野です。関係の深さは試合の勝ち負けや住んでいる場所にも左右されるため、購入やリピートの数字だけでは関係の深さを捉えきれません。だからこそ、愛着や参加を含めた関係の捉え方を早くから模索してきました。企業のファンづくりにとっても、学べることの多い先行例です。

買っている人が、好きな人とは限らない:名古屋グランパス様

2013年当時、名古屋グランパス様は、Jリーグの観戦者調査で、チームへの愛着度(チームアイデンティフィケーション)がJ1で最も低いという結果に直面していました。シーズンチケットを買う理由の1位も「チームへの愛着」ではなく「チケットの割引があるから」。チケットは売れていても、それが愛着の表れとは限らなかったのです。

さらに、社員一人ひとりが思い描く「ファン像」もバラバラでした。そこでファンクラブ会員へのアンケートで実態を把握し、スタジアムへの来場回数をもとに「潜在層」「超ライト層」などのファン層を定義しました。社内で共通の言葉を持ったことで、どの層に力を入れるべきかを議論できるようになりました。「誰をファンと呼ぶのか」をそろえることが、取り組みの出発点になっています。

記事)集めたファンの声と行動にこそ答えがある名古屋グランパス流マーケティングの3年間の軌跡

来場の積み重ねに、関係の変化が表れる:越谷アルファーズ様・ウルフドッグス名古屋様

名古屋グランパス様のCRMの知見は、競技を越えて受け継がれています。グランパス様からマーケティングのコンサルティングを受けた、Bリーグの越谷アルファーズ様とSVリーグのウルフドッグス名古屋様は、それぞれリーグ歴代最多の入場者数を記録しました(2025-26シーズン終了時点)。

越谷アルファーズ公式Xより

2つのクラブから語られたのは、ファンクラブ会員数の推移や会員の来場率、来場頻度といった数字でした。来場を重ねるうちに、座席にこだわりのなかったお客様が特定の席を選ぶようになるなど、観戦スタイルの変化をデータから読み取れるようになったという話もあります。勘や経験則ではなく、チーム全員が同じ数字を見て判断する体制が、関係の変化を捉える土台になっています。

記事)BリーグとSVリーグで生まれた、過去最高の「集客」。Jリーグクラブから競技を超えて受け継がれたCRMの舞台裏

長い期間の履歴で、関係をたどる:ジャパンラグビーマーケティング様

ラグビーは、野球やサッカーに比べて年間の試合数が多くありません。そのためジャパンラグビーマーケティング様では、お客様一人ひとりの購買履歴や行動履歴を、長い期間さかのぼって見られるようIDに紐づけて管理しています。

これにより、「特定の試合のチケットやグッズを購入したお客様」「1年間来場が途絶えているお客様」といった切り口で、関係の状態に合わせたコミュニケーションができるようになりました。今後は、単発の施策を点で終わらせず、線としてつなげていくことを目指しています。

記事)日本ラグビー発展に向けたファンマーケティング |Synergy! で変わったマーケティング業務と現場の意識

地域への愛着を育てる実践

地域に関心を寄せる人々との関係づくりでは、「ファン」という言葉を直接使わないこともあります。それでも、地域への愛着をどう育て、どう捉えるかは、ファンづくりと重なる課題と構造を持っています。

地元を離れても、つながりが続いているか:FAVTOWN

FAVTOWNは、進学や就職で地元を離れた若者と地域をつなぐ、当社が運営する関係人口創出プラットフォームです。新生活応援ギフト「ふるさと便」や地元ニュースなどを届けています。2023年2月に和歌山市で始まり、2026年7月時点で7都道府県24自治体、会員15,000人以上に広がりました。

FAVTOWN ファボタウン

立ち上げ当初から和歌山市の担当の方と共有してきたのは、会員数を大切な指標のひとつとしながらも、会員が地元とつながり続けていることにこそ価値がある、という考え方です。Uターンのような成果が見えるのは、数年から10年先になるかもしれません。だからこそ、つながりが途切れていないかを見続けてきました。

FAVTWON プロダクトオーナーの平手は、学生と話す中で「地元が好き」「何か貢献したい」という声が多いことに驚いたと振り返り「地元を思う気持ちを、行動につなげるきっかけをつくりたい」と話します。3年半が過ぎた現在も、このコンセプトは変わっていません。

記事)和歌山市と二人三脚で育てた新サービス「FAVTOWN wakayama」の目指す未来

愛着と行動のつながりを確かめる:関係人口追跡調査2026

FAVTOWNを通じた若者とのつながりが、実際の行動にどう結びついているのか。当社は和歌山市と共同で、FAVTOWN Wakayamaの会員を対象に「関係人口追跡調査2026」を実施しました(2026年4〜5月、有効回答397名)。

ふるさと便やイベントなどのFAVTOWN企画に1回以上参加した会員の移住率は20.6%で、一度も参加していない会員の14.4%を6.2ポイント上回りました。企画への参加と、移住という具体的な行動との間に関連性が確認されたかたちです。また、和歌山市へUIターンした61名のうち67.2%が、FAVTOWNの利用が後押しになったと感じていました。引越しの決め手に「地縁・ゆかり」や「この地域が好き」を挙げた人ほど、後押しを感じた割合が高くなっています。

図5)FAVTOWN企画への参加と移住率(プレスリリースより)

一方で、登録から引越しまでは平均21.6か月かかっていました。また、県外在住の会員の約9割がUIターンに前向きでしたが、実現に必要な条件として最も多く挙がったのは「魅力的な就職先」(67.5%)でした。愛着があっても、それだけですぐに行動に至るわけではありません。

FAVTOWNのアドバイザーである伊藤将人氏も、人数の目標ばかりを追うのではなく、「関係」の中身を詳しく把握し、それがどのような行動や心情に結びついているかを確かめることの重要性を指摘しています。

リリース)転出後の「地域とのつながり」がUIターンを後押し──和歌山市×シナジーマーケティング、関係人口追跡調査2026

※この調査はFAVTOWN会員(もともと地域とのつながりに前向きな層)を対象としたもので、回収率は5.5%です。和歌山市へUIターンした方全体の傾向を示すものではありません。

ファンを、関係を深める「段階」のひとつとして捉える:関係人口

当社では、総務省による「ふるさと住民登録制度」の発表を背景に、さまざまな地方自治体に向けた、ファンより先の地域の担い手となる関係人口を育むためのお手伝いを行っております。地域と人の関与を段階で捉え、交流人口からファンへ、ファンから関係人口へ、そして関係が深まった先に移住・定住がある、という考え方で整理をしました。

ファンと関係人口を分けるのは、動機の違いです。ファンが「その地域が好き」「応援したい」という気持ちにとどまるのに対し、関係人口は「地域の力になりたい」という当事者意識を持っています。ファンを関係が深まる途中の一段階として置くと、「誰の、どの状態を変えたいのか」を目標として書きやすくなります。

記事)ふるさと住民登録制度が「地域のファン」を「担い手」へ変える ─自治体向け関係人口CRM「region CRM」チームインタビュー

お知らせ

当社は「人と企業が、惹かれ合う世の中へ。」をビジョンに「Create Synergy with FAN」をミッションに掲げ、生活者と企業のより良い関係づくりを支援しています。

冒頭でご紹介したデータは、「顧客ロイヤルティ・ファン化施策の実態調査」の一部です。詳細レポートでは、「測れている」という自己認識と実際に活用されている指標の関係をはじめ、施策への投資、施策の継続性、「誰をファンと呼ぶのか」という社内の基準まで横断して分析しています。

詳細レポートを無料でダウンロードする

また、調査結果をもとに、顧客との関係の変化を捉え、次の判断につなげるための考え方を解説するオンラインセミナーを開催します。

  • タイトル:ファンマーケティングの成果は、何で測る?
  • サブタイトル:顧客との「関係の変化」を捉え、次の判断につなぐKPI設計
  • 開催日時:2026年11月12日(木)①11:00–11:45 ②13:00–13:45(同じ内容を2回開催)
  • 開催形式:オンライン
  • 参加費:無料

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自社と顧客のより良い関係づくりを見つめ直すきっかけとして、ぜひご活用いただけますと幸いです。


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