地域メディアFAVTOWNの「攻め」も「守り」も支える。フルリモート3年目のマネージャーに聞く新規事業のビジネスデザイン

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進学や就職を機に地域を離れる若者とふるさとをつなぐプラットフォーム「FAVTOWN」で新しいサービスや機能が続々とリリースされていることをご存知ですか?そんなFAVTOWNの事業設計と安定運用の仕組みづくりを担っているのが、稲垣さんが率いるビジネスデザイングループです。

昨年まではデジタル広告の領域でスマートに仕事をこなしていた稲垣さんに、各地の自治体へ舞台が広がるFAVTOWNのビジネスデザインのお仕事とその裏側にあった苦悩や不確実な事業に取り組む原動力、さらにはリモートワークから地域プロジェクトをマネジメントする方法についてお話を伺いました。

プロフィール

稲垣 康輔
メディア事業部 ビジネスデザイングループ
マネージャー

2014年入社。「Synergy!」の営業を経験したのち、2020年よりYahoo!ダイレクトオファーのサービス責任者。2024年8月よりFAVTOWNのビジネスデザイン担当。2022年より出身地である岐阜県多治見市にて、月2~3回の出張をしながらフルリモートで勤務中()。
座右の銘は「謙虚と感謝」。最近読んだ書籍「THE PLAYFUL ANTS」の「うろうろアリになろう」という考え方に影響を受けた。

FAVTOWN(ファボタウン)
https://favtown.jp/

進学や就職で地元を離れた若者と地域とのつながりを継続・深化させ、将来的なUターンや地域貢献につなげる関係人口創出プラットフォーム。2023年2月に和歌山市で開始し、2024年7月には愛媛県の松野町・鬼北町・愛南町にも展開。自治体および地域の事業者と会員をつなぎ、会員への地元情報や特産品の提供、イベントの実施、デジタル会員証の導入など、地域全体を巻き込んだ多面的なサービスを展開している。

デジタル広告の世界とは景色が違う「0を1にする」挑戦

―― 稲垣さんがFAVTOWNに参画された経緯と、関わったFAVTOWNの新サービスについて教えてください。

僕がFAVTOWNに本格的に関わり始めたのは、和歌山と愛媛でのサービス立ち上げ期が終わり、事業をさらに拡大していくフェーズでした。その中で僕に与えられた最初のミッションは、FAVTOWNが今後多くの自治体に展開しても運営が滞りなく進むような、組織的な仕組みを作ること。それまで属人的なマンパワーに頼っていた部分を業務整理やルール作りによって仕組み化することから始めました。

その傍らで、いくつかの新しいサービスの立ち上げにも取り組みました。ひとつ目が「ふるさと納税返礼品提供」です。

FAVTOWNには「ふるさと便」というサービスがあります。地元を離れた若い世代の方々に、地元からの応援や懐かしさを感じられる商品、あるいは初めての一人暮らしを支える品々を届けることで、地元との関係を維持しもっと好きになってもらう、地元愛を深めてもらうことを目的としており、会員の方々にも地元の企業の方々にも良い評価をいただいています。このような機会を、すでにあるふるさと納税の形を利用して、あらゆる世代の方々に提供できないか、という発想から、IT企業である当社がふるさと納税返礼品業者としてチャレンジすることになりました。

老舗IT企業が、和歌山市の「ふるさと納税返礼品提供事業者」になったワケ

次に「地元ニュース」機能を6月にスタートしました。
FAVTOWNでは月に数回、自治体からの情報を会員の方々に届けていましたが、情報の鮮度という点では十分ではありませんでした。地元の「今」がわかる、鮮度の高い情報に触れる機会があれば、もっと地元を身近に感じてもらえるはず。そう考えて、地元の雑誌社やタウン誌を発行しているメディアに協力いただき、LINEで手軽に最新ニュースを読むことができる機能を開発しました。「小学校が保護者向けの給食体験会を実施しました」といったレベルのローカルな話題まで収集しています。

僕自身、東京で働いていたとき「多治見市がまた最高気温を更新しました」といったような些細なニュースでも、触れる機会があることで嬉しい気持ちになり地元のことを考えるきっかけになった経験があります。かつて地元を離れていた自分が「あったらよかったな」と思えるサービスです。

地域と心をつなぐ、新サービス「FAVTOWN地元ニュース」誕生秘話 〜開発メンバーが語る舞台裏

最後に、先日リリースした「FAVTOWNキャリア」は、地元を離れた若い会員の方々に、地元企業の存在やそこでの働き方を知ってもらうための就職支援サービスです。都会の大企業への就職が主流とされがちな中で、「地元で働く」という選択肢を知る機会を、リアルな情報とともに提供することに意義があると考えています。

転出者を“地域資産”に。関係人口創出から地元就職へつなぐ自治体向け「FAVTOWNキャリア」提供開始

―― いずれも前例のない新しい取り組みですが、不安はありませんでしたか?

楽しみ半分、不安半分、というのが正直な気持ちでしたね。新規事業を大きくしていくフェーズに関われる面白さを感じる一方で、僕にとっては経験の少ない領域、特にビジネスオペレーションの構築には不安がありました。以前担当していた事業は、確立されたビジネスモデルをスケールさせるフェーズでしたが、FAVTOWNは「0を1にする」挑戦。不安の方が大きかったかもしれません。

ふるさと納税とキャリア支援については、どう仕事を進めたらいいのか、最初は本当にわけがわからなかったです。法的な論点や複雑なステークホルダー、さらには有形物を梱包して発送するといった、これまで経験したことのない業務の連続でした。ボタンひとつで商品を届けられたデジタル広告の世界とは全く違い、新しいことの連続で、まさに手探り状態でしたね。

社内外のスペシャリストの協力を得てビジネスを形にする

―― 「FAVTOWNキャリア」は、株式会社オモワクとの共同事業になっていますね。

このサービスは企画そのものよりも、私たちFAVTOWNが求人や職業紹介のサービスを行えるようにするための体制構築に奔走しました。

サービスを設計する途中で、求人情報を掲載するには職業紹介の資格が必要だということが判明しました。当社法務の市橋さんや管轄の労働局と折衝を重ねた結果、当社として必要な届出をしつつ、グループ会社で人材紹介事業を展開しているオモワク社と協力することにしました。

「FAVTOWNキャリア」は自治体や地域の方々の期待も大きく、何としてもやり遂げる必要があったので、オモワク社との共同事業という形で着地できたときには、心から「耐えたな」と思いました。

その後共同事業として業務設計のやり直しをする中では、個人情報の取り扱いという壁が待っていました。オモワク社と、当社FAVTOWNで集めた個人情報をどう取り扱うかについて、当社リスクマネジメントグループの岡部さんを交えて議論を重ね、規約の面から連携方法を詰めていきました。新卒同期の森川さんがオモワクにいたこともあり、意思疎通のコミュニケーションは取りやすかった一方で、距離が近いがゆえに別会社であることを忘れそうになる怖さもありました。プライバシーポリシーやセキュリティ基準などの違いに気をつけながら慎重に進めていきました。

―― 地域を舞台にした事業はマネタイズが難しいとも言われますが、稲垣さんはFAVTOWNの強みや面白さはどこにあると感じますか?

FAVTOWNはメディア事業ですので、情報が先か会員獲得が先かという「鶏と卵の問題」があります。情報が少ない状態で会員を集めるのも、会員がいない状態で自治体に情報提供をお願いするのも困難です。

この状況を突破するブレイクスルーになったのが先ほどお話しした「ふるさと便」です。僕がまだFAVTOWNチームに加わる前のことですが、このふるさと便をきっかけに会員が集まり、会員さんからの好意的な反応が自治体や地域の事業者様に伝わることでFAVTOWNの価値を認識していただき、最初のサイクルが回り始めたと聞いています。

品物自体が嬉しかったのはもちろんですが、一緒に入っていた「頑張ってね」といったメッセージに、非常に励まされたと感じました。このメッセージを通じて、「(地元が)繋がって応援してくれている」と感じたことが嬉しかったです。

FAVTOWNとの出会いが私のUターン就職のきっかけに ~和歌山市職員 Mさんのストーリー

地域の事業者様にご賛同をいただくにあたっても 「ふるさと便」という強いコンテンツが活きました。ふるさと便を受け取った若い世代の生の声を情緒的な価値としてお伝えすることで、少しずつ「FAVTOWN を支援する意味」を感じていただくことができるようになってきたと聞いています。

僕自身は、CPAなど数字で成果を測ってきた広告事業でのキャリアが長かったので、最初こそは戸惑いましたが、FAVTOWNでは機能的な価値だけではなく、プレゼントやイベントなどの企画を通じて直接ユーザーさんから得られた情緒的な価値が事業を前に進める大きな活力になっていることに、今は大きなやりがいと責任を感じています。

「この仕事は自分でなくてもいいのではないか」スランプからの脱却

―― 未経験の事業で次々と発生する課題。個人としても辛い時期があったのではないでしょうか。

実は、今年の1月から3月頃、ふるさと納税の梱包作業や複数の業務が重なり、さらに新年度から愛媛の担当を任され、スピードアップを求められる中で、身動きが取れなくなってしまった時期がありました。

僕は月に1、2回大阪オフィスに行く以外は、自宅のある岐阜県多治見市からフルリモートで勤務()をしているのですが、業務量の多さに加え、社内外の関係者へ気軽に相談できない状況がありました。後からFAVTOWNの業務に加わって理解の解像度が低い自分が、地域の方やチームメンバーに質問をしても、「何か違う」と返されるのではないかという、根拠のない不安にとらわれ、身動きが取れなくなってしまって。当時は「この仕事は自分でなくてもいいのではないか」と思うことも。ここまで落ち込んでしまう自分自身に驚きましたね。

そこから立ち直ったきっかけは、上司の勧めで現地の愛媛へ行って、県職員や地元事業者の方々の前で僕がFAVTOWNの取り組みを発表する機会をいただいたことでした。発表後、多くの方々から「良い取り組みですね」と声をかけていただき、自分の仕事と現地との繋がりを初めて体感できました。

2024年に愛媛県庁で行われた松野町、鬼北町、愛南町との合同連携協定締結式。CEOの奥平とCOOの岡村が参加。

それまでは画面の中のFAVTOWNしか知らなかったけれど、現地で直接地域の方々の声を聞くことで、自分の仕事が届いている部分と、まだ届いていない部分を肌で感じることができたのが大きな転機になりました。「ずっとリモートではダメだ」と痛感しましたね。そのとき僕に声をかけていただいた事業者さんは、その後FAVTOWNの応援パートナーにもなってくれました。

―― 今の稲垣さんを支えるモチベーションは何でしょうか。

FAVTOWNという事業そのものへの強い共感です。僕自身も地方出身で、転出して初めて地元の良さに気づいたり、コロナ禍の時期に地元から送られたギフトに心を動かされたりした経験を持っています。地元に貢献したいという思いがありました。「自分がFAVTWONチームの中で最もFAVTOWN的な人間だ」と自負していますので、この素晴らしいサービスをきちんとユーザーに届けられる状態にしなければならない、という使命感を持っています。

同時に、このサービスが地域にとってネガティブな影響を与えてはならない、とも考えています。特に、労働力不足で多くの業務を抱える地域の行政職員の方々に煩雑な負担をかけることは絶対に避けたいのです。そのための予防線を張り、自治体の方々にとっても使いやすいサービスを構築することがとても重要です。

「その先にある幸せな世界」を思い描き、前例のないものを創る

―― FAVTOWNに関わり始めて1年、稲垣さんの働き方は変化しましたか?

はい、現地に行かなければならないという強い気づきを得てからは、働き方を意識的に変えました。現在は定期的に現地訪問日を設定し、その日に向けてタスクを管理しています。月に1回程度と決め、オンラインでできることと、オフラインでしかできないことを整理し、出張を最大限に活用するサイクルを回し始めています。

―― 稲垣さんがマネジメントする「ビジネスデザイングループ」は、どのような仕事をする部署なのでしょうか。

ビジネス企画とプロジェクトマネジメントと営業の役割を持ったチームで、FAVTOWNの戦略やビジネスモデルの策定から、エンジニアやデザイナーと連携したプロダクト開発、事業を動かすための業務設計、そしてそれをサービスとして届けるところまで広く担当しています。

全社朝礼でのグループ紹介では「喜びを思い描き、ビジネスとして実現される道のりを設計する仕事」という言葉を引用させていただきました。顧客の課題解決であれ、自分自身の「こうなったらいいな」という発想であれ、その先にある「嬉しい感じ」や「幸せな世界」を想像することが起点になり、その妄想を妄想で終わらせず、ビジネスとして成立して持続ができる仕組みを形にしていくことが僕たちの仕事だと考えています。

月次の全社朝礼で岐阜県の自宅から全社員にビジネスデザイングループの仕事を紹介する様子。

―― 未来の幸せを思い描いて、前例のないものをゼロからビジネスにする。その大変さとやりがいはどこにありますか?

先行きが不確実な時代に、起業のような大きなリスクを取らず、会社員として大きく挑戦ができることは非常に幸運だと感じています。元々自分は慎重に手堅く物事を進めたいタイプなので、前例のないことに取り組む苦しさは正直あります。しかし、そんな僕だからこそ、仕組みに無理や破綻がないかに目を配らせながら「今までのルールや常識のどこを変えれば実現できそうか」という突破口も見つけられる、とも感じています。

大きな壁を乗り越える最中には楽しさよりも大変さが先に立ちますが、後から振り返って「あの時は大変だったな」と笑えるような仕事がFAVTOWNのビジネスデザインです。

個人としては、一つひとつの業務に全力で取り組む中で、点と点がつながり、将来のキャリアや自分の市場価値が形成されていくのではないかと考えています。

「三方良し」を真正面から目指す会社で仕掛ける、FAVTOWNのこれから

―― さきほど、会社員として挑戦できることがありがたい、とおっしゃいましたが、「人と企業が、惹かれ合う世の中へ。」という会社のビジョンとご自身の仕事の繋がりをどう考えていますか?

大学でマス広告を学んだとき「大量に投下される広告が、どれだけの人に本当に届いているのか」という疑問からCRMに興味を持ったことが、シナジーマーケティングに入社するきっかけとなったのですが、その考えは今も変わっていません。ビジネスの世界では、時に一方の利益のために他方が犠牲になることもありますが、当社は「三方良し」を真正面から目指そうとしているので、僕としては真っ直ぐで正しい会社で働いているという感覚があります。

―― 最後に、FAVTOWNの今後の展望を教えてください。

現在、FAVTOWNは6,000人を超える若者と100社以上の地元企業を繋ぐメディアになっています。今後は、サービスを提供できる地域を増やしていくために、FAVTOWNの理念に共感してくれるパートナーさんを探していきたいと考えています。自治体と当社の間に立ち、同じ思いで地域と人をつなぐ事業を推進していただけるパートナーさま向けの環境を構築していくことも、私たちビジネスデザイングループの役割です。

この事業は、地元が好き、地元と繋がりたいという人たちの「思い」が原動力です。その思いが良いサイクルを生み、共感の輪が少しずつ大きくなっていく。今、FAVTOWNはそんなエキサイティングなステージにいると感じています。

(取材/編集:経営推進部 ブランドマネジメントチーム)

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