
2025年3月14日、シナジーマーケティング(以下、当社)はデジタルバンキング展(DBX2025)にて、「新宮信金の挑戦:常務が語る地域創生につながる金庫内の人材育成と新しい事業者支援の形」と題したセミナーを実施しました。
デジタル化が進むなか、組織の未来を担うデジタル人材育成の重要性がますます高まっています。一方で、日本の労働市場ではデジタルスキルを持つ人材が依然として不足しており、金融機関もその例外ではありません。このような状況下で、既存の職員をデジタル人材として育成することは、人材不足を補うだけにとどまらず、組織の競争力や成長力の強化にも直結します。
このような背景から、新宮信用金庫様でDXを推進されている常務理事の和平様を講師にお招きし、当社の足立とともに「金融機関における人材育成の全体像とポイント」「実際の取り組みとその成果」「デジタル化の時代に対応した取引先企業様(地域事業者様)へのご支援」について語っていただきました。今回は、その模様をお届けします。
登壇者

和平 幸勝 氏
新宮信用金庫
常務理事 業務部長

足立 龍
シナジーマーケティング株式会社
DX事業部 DXBグループ
シニアサービスコーディネーター
※部署名・役職は取材当時(2025年3月)のものです
■新宮信用金庫

1922(大正11)年創立。新宮エリア唯一の地域金融機関として、百余年にわたり地域経済の成長・活性化に寄与しています。令和3年度よりスタートした『長期3か年経営計画 NEXT STAGE~100年の感謝、想いをかたちに未来を創る~』のもと、役職員が一丸となって、新宮信用金庫にしかできない「地域貢献」を目指しています。
https://www.shinkin.co.jp/shingu/
新宮信用金庫様のデジタル人材育成への包括的アプローチ
最初に当社の足立から、新宮信用金庫様がデジタル人材育成に着手されたきっかけや取り組みの全体像をご紹介しました。一部の職員(業務部、営業推進部)を対象とした研修からスタートし、全職員向け、渉外担当者向けへと範囲が広がり、その過程で、コーポレートサイトのリニューアルや取引先企業様へのデジタル人材育成支援へとつながっていきました。
当社はデジタル人材育成支援サービス「DX BOOSTER」「デジハイク」による並走支援をご提供し、新宮信用金庫様と二人三脚で取り組みを進めております。

デジタル人材育成に着手した背景
新宮信用金庫様は、2021年4月からの長期3か年経営計画のなかで、「デジタル技術を活用したお客様サービスの向上」「デジタルマーケティング推進による非対面チャネルの強化」を掲げていらっしゃいました。一方で、「デジタル化の必要性は感じているが、何から着手すべきかわからない」といったお悩みをお持ちでした。そこで、当社は「理想と現実のギャップを洗い出し、課題を整理」「職員の方にデジタルマーケティングの知識・スキルをお伝えする」などのご支援をすることとなり、今回の取り組みが始まりました。
短期的な目線で目の前の課題解決をプロにすべて任せることは簡単ですが、知識がなければ提案の良し悪しが判断できなかったり、似たような課題が出てくるたびにプロへの依頼を繰り返すことになりかねません。和平様は「対処療法ではなく、長期的な目線でデジタル人材を育成し、自走できるようになることが、さらなる金融機関の発展にもつながっていく」と考えられました。
デジタル人材育成に向けた研修
今までに、職員対象の研修3つと取引先企業様対象の研修1つを実施されています。
①デジタルマーケティングの実践的な知識・スキルの習得
- 対象者
業務部(金庫内のDX推進を牽引)、営業推進部(顧客へのデジタル化支援を担当) - 研修内容
「DX BOOSTER」によって、新宮信用金庫様の現場に即した実践的なノウハウを学ぶ。具体的には、Webサイトの現場把握・分析、Webサイトリニューアルに向けた設計・構築支援、リニューアル後の効果検証、目的達成および課題解決のための施策立案・検討など。
学んだ知識・スキルを活かして、新宮信用金庫様主導でのWebサイトのリニューアルが実現。利用者様の目線に立った課題の洗い出しや施策の企画立案ができるようになった。

■DX BOOSTERとは
DX BOOSTERは、マーケティング人材を育成する支援サービスです。各企業のマーケティング課題に応じたプログラムを提供し、「フレームワークを活用したマーケティング設計」や「データに基づく戦略・施策の意思決定」ができる人材の育成を支援します。20年以上のマーケティング支援で培った知見を活かし、実践的なカリキュラムをご用意。経験豊富な専門コンサルタントが伴走しながら、企業のマーケティング力向上をサポートします。
- ご支援テーマ(一部)
Webサイトのフルリニューアル、個人向けローンの新規申込み獲得、Web広告インハウス化支援、アプリDL・利活用・コミュニケーション促進、若年層向け預かり資産獲得、デジタルマーケティングの基礎・応用研修 など
https://dx.synergy-marketing.co.jp/
②デジタルマーケティングの基礎知識の習得
- 対象者
全職員(支店長や役職者含む) - 研修内容
「デジハイク」による座学とワークショップで、デジタルマーケティングの基礎知識および基礎的なノウハウを学ぶ。
金庫全体としてデジタルマーケティングに対する共通認識・共通言語が生まれ、施策の質や検討スピードが向上。
③デジタルマーケティングに関する提案書作成ノウハウの習得
- 対象者
渉外担当の職員 - 研修内容
お客様である取引先企業様に対してデジタルマーケティングを活かしたご提案をするために、課題に即した施策の考案・検討や提案書作成のノウハウを約1年かけて学ぶ。
若手渉外担当職員による、取引先企業様へのホームページ改修提案が実現。
■デジハイクとは
これからデジタルマーケティングを始める企業様やもっと効果的な取り組みがしたいと考えている企業担当者様・部署向けに「講義とワークショップ」を組み合わせて実施するサービス。講義でわかりやすくデジタルマーケティングの基礎知識を「インプット」、続くワークショップでそれらをベースにした参加者各自の考えを「アウトプット」できるので、課題発見や施策検討などを「体感」しながらデジタルマーケティングの基礎を学んでいただける。
https://digihike.synergy-marketing.co.jp/
上記にくわえて、地域全体の活性化を目的に取引先企業様への人材育成支援を実施されました。
④取引先企業様を対象としたデジタルマーケティング研修
- 対象者
新宮信用金庫の取引先企業様 - 研修内容
「デジハイク」による座学とワークショップで、デジタルマーケティングの基礎知識および基礎的なノウハウを学ぶ。さらに、希望する取引先企業様には個別支援も実施。
地域全体としてデジタルマーケティングの知識を活用することで、地域の発展を狙う。

▶︎新宮信用金庫様のお取り組みの詳細は、公式サイト掲載の事例記事をご覧ください。
地域創生の実現に向けた、取引先企業様への新たな支援
後半は、和平様より「デジタル人材育成の重要性」「取り組みによる成果」「取引先企業様への新たな支援」について、ご紹介がありました。

デジタル人材育成の重要性
新宮信用金庫様は、2021年4月からの長期3か年経営計画のなかで「金融機関としての成長(業績向上に向けた組織力の強化)」と「地域活性化(取引先企業様の経営課題の解決)」という2つの重要なテーマに注力されています。この目標を達成するためには、時流を鑑みてもデジタル施策が不可欠です。具体的には、「自金庫がデジタルに関する知識・スキルを習得することで組織全体の強化が図れるだけでなく、それを取引先企業様にお伝えすることで、経営課題の解決をご支援できるのではないか」と考えられました。
取り組みによる成果
- 金庫全体
デジタルに関する共通言語が生まれたことで、役職の垣根を超えてコミュニケーションが活性化。金庫内で、デジタルマーケティング施策の提案も生まれている。 - 渉外担当職員
取引先企業様に対して、融資などの金銭面だけでなく、デジタルマーケティング施策に関するアイデアのお伝えやご提案が可能に。 - 複数部門(部門横断)
自発的に、「取引先企業様を対象にしたデジタルマーケティング研修支援」(後述)を企画。理事長への上申から予算申請、金庫内の調整までを実施し、実現。 - 渉外担当職員(外勤)と窓口担当職員(内勤)
同じ視点や知識の共有ができたことで業務の連携が強化され、お客様に提供するサービスの品質が向上。
続いて、2025年2月より新たに実施している、取引先企業様を対象とした実践的なデジタルマーケティング研修「地域集客4大施策習得講座」についてご紹介がありました。「金融機関としての成長」と「地域創生につながる価値を創出すること」を目的に職員自らが企画立案を行い、実現したご支援です。
自金庫内に留まった施策を実施するだけでは、事業成長に限界があります。事業の性質上、金融機関の成長には地域の活性化・成長が欠かせません。このことから、特定の企業や担当者に限らず、より多くの人々がデジタル化やデジタルマーケティングの知識・スキルを身につけることが重要です。地域一丸となってデジタル人材の育成を進めることで、金融機関としても地域全体としても、継続的な成長および成長速度の加速を実現したいとの思いから、実施されています。
取引先企業様対象の実践的なデジタルマーケティング研修「地域集客4大施策習得講座」
- 対象者
取引先企業様(9社) - 研修内容
「Google ビジネスプロフィール」「SNSの運用」「SNS広告出稿」「Webサイト」の4つの手段について、3か月間で地域ビジネスの集客に特化したノウハウを学ぶ。
座学と実践的なワークショップで実務に沿った施策の運用も学べるため、デジタルマーケティングの基礎知識にくわえて、自社の集客力向上に向けてすぐに使えるノウハウの習得が可能。
初回の講義後すぐに、講義で取り上げた誰でも簡単かつ無料でデザインが作れる「Canva(キャンバ)」のアカウントを取得し、実際に画像を作ってSNS投稿をされた企業様も。

▶︎「地域集客4大施策習得講座」の詳細はこちら
セミナーの最後に、和平様は次のように語られました。
「シナジーマーケティング様のようなデジタルマーケティングのプロフェッショナルに支援していただいたおかげで、何から手をつければよいか分からない状態からこの3年間で、当金庫のデジタル化が大きく進展しました。さまざまな良い変化がありましたが、特に職員が自ら考え、成果を出すための行動を起こせるようになったことは、非常に喜ばしいことです。DXに関する取り組みのすべてを外部に委託していたら、新宮信用金庫の未来は非常に厳しいものになっていたでしょう。
自走できる力があれば、どんな課題が出てきても私たち自身で対応することができますし、取引先企業様への支援範囲の拡大やさらなる地域貢献も可能になります。長期的に見て、経営にとって非常に大きなプラスになると考えています。短期的な施策で業績向上を図ることも重要ですが、持続的な成長を見据えた中長期的な視点での施策が不可欠です」

あっという間の40分。参加者の皆さんは、熱心にメモを取りながら聴講されていました。受講後のアンケートでは、「『人材育成で、目に見える具体的な効果を出すのは難しい』と認識していたが、職員自らが率先して取り組む状況を作り出せるとのこと、大変勉強になった」「個々ではなく、全社が一丸となって真剣にデジタルマーケティングを学び、実践していくことの重要性がよく理解できた」「『金融機関と取引先企業様が同じ目標に向かって行動していく』という発想は今までなかったので、大変参考になった。お互いの事業拡大や地域発展に有効だと思った」といった声も聞かれました。
当社では今後もお客様の理想実現に向けて、システム導入はもちろんのこと、さまざまなご支援を続けてまいります。お客様の知見・ノウハウを広く共有させていただくイベントやセミナーの開催も随時検討しておりますので、ぜひご期待いただけましたら幸いです。
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(制作/編集:経営推進部 ブランドマネジメントチーム)