シナジーマーケティング(以下、当社)は、業界業種問わず、DX推進を目指すお客様を支援するサービスを多数展開しています。和歌山県新宮市にこのエリア唯一の地域金融機関として本店を構える新宮信用金庫様も、サービスを導入いただいている金融機関のひとつです。
新宮信用金庫様は、地域産業の活性化に貢献するため、自らがデジタル施策に強い組織となるべく、当社の並走型支援サービス「DX BOOSTER」や体験型学習サービス「デジハイク」の活用による、職員のデジタル人材化およびデジタルマーケティング業務の自走を実現。加えて、地域産業の活性化に向けたお取引のある事業者様へのデジタル化支援も実施されています。
今回は、新宮信用金庫のDX推進プロジェクトの皆さまとDX BOOSTERチームの足立が、DX推進に向けた取り組みやそれによる地域産業への影響、当社との協業で目指す未来について語り合いました。
■DX BOOSTERとは
「これからデジタルマーケティングに本格的に取り組みたいけど、現場を担える担当者がいない」といった悩みを解決するための、新任マーケティング担当者育成サービス。6か月間の実践的プログラムによって、未経験から始めても、短期間で現場で使える実務的なデジタルマーケティングスキルを身につけることが可能。
https://dx.synergy-marketing.co.jp/
■デジハイクとは
これからデジタルマーケティングを始める企業様やもっと効果的な取り組みがしたいと考えている企業担当者様・部署向けに「講義とワークショップ」を組み合わせて実施するサービス。講義でわかりやすくデジタルマーケティングの基礎知識を「インプット」、続くワークショップでそれらをベースにした参加者各自の考えを「アウトプット」できるので、課題発見や施策検討などを「体感」しながらデジタルマーケティングの基礎を学んでいただける。
https://digihike.synergy-marketing.co.jp/
対談メンバー
和平 幸勝 氏
新宮信用金庫
常務理事 業務部長
⼝地 耕司 氏
新宮信用金庫
常勤理事 総務部長
前⼭ 和輝 氏
新宮信用金庫 業務部
課長代理
須川 恵右 氏
新宮信用金庫 業務部
主任
足立 龍
シナジーマーケティング株式会社 DX事業部 DXBG
営業
※部署名・役職は取材当時(2024年6月)のものです
新宮信用金庫
1922(大正11)年創立。新宮エリア唯一の地域金融機関として、百余年にわたり地域経済の成長・活性化に寄与しています。令和3年度よりスタートした『長期3か年経営計画 NEXT STAGE~100年の感謝、想いをかたちに未来を創る~』のもと、役職員が一丸となって、新宮信用金庫にしかできない「地域貢献」を目指しています。
https://www.shinkin.co.jp/shingu/
DX推進は、短期ではなく長期的な視点での実施が重要
―― 金融ITフェア「FIT2019」で接点が生まれ、コロナ禍を経てご支援がスタートしました。
新宮信用金庫 口地:
展示会には、コロナ禍で対面営業を主とする当庫も変革を迫られていたなか、後手に回っていたデジタル化を進めるために参加しました。当時は、デジタル施策が必要であることは理解していましたが、何から着手すべきかわからない状況でした。そこで、悩んでいるよりも専門家に相談したほうが早いと、シナジーマーケティングさんにそのことを率直に尋ねたことがお付き合いのきっかけです。
シナジーマーケティング 足立:
「Webを通じて、個人ローンの新規顧客を獲得したい」という明確な目標がありつつも、「目指す場所は見えているのに、自分たちが今いる場所が分からない」とのご相談をいただきました。そこで、私から、「まずは現状を確認・分析して理想と現実のギャップを洗い出し、課題を整理します。そして、現状分析から課題抽出までの仕組みを作ったら、その後は自走できるように、職員の方々にデジタルマーケティングに詳しくなっていただくのはいかがでしょうか」とお伝えし、DX BOOSTERをご提案しました。
新宮信用金庫 口地:
目の前の課題を解決するにとどまらず、長期的な目線で職員をデジタル人材に育成するという提案には驚きましたが、「短期的な目線で課題解決施策をすべてプロに任せるのは簡単だが、時間が経てば結局また同じ状況になり、再度同じような依頼することになりかねない」という足立さんの言葉には説得力がありました。自走できれば、どんな課題が出てきても我々で対応できるので、長い目で見ると当庫のプラスになることは明白でした。
我々信用金庫は、地域事業者様の経営課題を解決することが務めです。エリアが限定される事業ですから、地域が元気でなければ、我々の未来もありません。新宮市に元気のある企業が増えれば、連動して雇用も増えて活性化していくので、地道にご支援を続けたいと考えています。時流からも、地域事業者様への支援にデジタル施策が欠かせないことは明らかですが、我々自身がそうだったように、多くの地域事業者様がいまだ対策できずにいるのが現状です。
新宮信用金庫 和平:
足立さんの提案を受けて、「我々がデジタル施策に明るくなることで、地域事業者様にそのノウハウをお伝えできるのでは」との考えに至り、DX BOOSTERの導入を決めました。2021年4月に策定した当庫の「長期3か年経営計画」も決め手のひとつです。この経営計画には、「デジタル技術を活⽤したお客様サービスの向上」「デジタルマーケティング推進による非対面チャネルの強化」などが明記されており、当庫およびお取引のある地域事業者様の両軸でのデジタル化に向けた着手が急務になりました。
シナジーマーケティングさんには、デジタル化施策に直接関わる職員の自走から始まり、窓口を含む全職員へのDX研修の実施、お取引の地域事業者様へのDX研修の提供、渉外担当の職員を対象にした営業研修と、さまざまな提案をいただきました。4年以上も継続して支援をお願いしているのは、シナジーマーケティングさんが我々の課題に対して常に解決の糸口を示してくれることや、我々が望む場所まで自走できるように支援の手を緩めずに伴走してくれる点を高く評価しているからです。
新宮信用金庫 須川:
デジタルマーケティング領域に特化していて課題解決策の引き出しが多いだけでなく、我々金融機関の事情にも明るいので安心してご相談できます。どんな疑問にも的確に答えていただけるので、大変心強く思っています。
お客様自身の手で、現状分析から課題発見、施策考案・実行までを実現
―― 具体的な取り組みとしては、「Webサイトのリニューアル」と「DX人材育成」の2本柱で進められたと伺いました。
新宮信用金庫 口地:
Webサイトリニューアルは、DX BOOSTERでWebサイト分析を学んだことで、我々がWebサイトで伝えたい情報とお客様の欲しい情報がかみ合っていないと判明したことがきっかけです。
新宮信用金庫 須川:
個人向けローンのお客様を新規で獲得したいという我々の理想に対して、Webサイトにアクセスされている方の大半がインターネットバンキング利用のお客様でした。
新宮信用金庫 口地:
現状が可視化されたことで、ローンの新規顧客獲得につながる潜在顧客にアクセスしてもらうための戦略が必要であるとわかりました。そこで、今まで接点の少なかった若年層に、「信用金庫が身近な存在であると認識してもらうこと」「当庫のサービスやローンを気軽に利用してもらえる環境を整えること」を目標に、Webサイトの全面リニューアルを決断しました。準備から構築まで約1年を経て、2024年4月に新サイトを公開しました。
シナジーマーケティング 足立:
実は、DX BOOSTERを導入いただいた当初、Webサイトのリニューアルは計画に含まれていませんでした。分析を進めていくうちに、皆さん自身がWebサイトの問題点を強く意識されるようになり、その結果、全面リニューアルをご支援することになりました。
デジタルマーケティングのスキルや知識、考え方が身につくことで自力で課題の発見から課題解決に向けた施策の考案・実行が可能になる点が、まさにDX BOOSTERの最大の効果でありメリットなので、Webサイトのリニューアルを貴庫で決断されたことはとてもうれしく思っています。
新宮信用金庫 須川:
Webサイト分析ができるようになったことで、「現在のWebサイトの構造だと、一部のみ手直しをするといった小手先の改善では我々の望む成果に到達しない」と自然に理解できたことは、大きな成果でした。
新宮信用金庫 前山:
デジタルマーケティングの実務スキルをみっちり鍛えていただいたおかげで、自走するための力が確実につきました。
新宮信用金庫 口地:
正直に言えば、「手が回らない場合は、シナジーマーケティングさんが巻き取ってくれるのでは」と甘く考えていた部分もありましたが(笑)、「自走できるチームにする」という当初の目的は一切ぶれずに、今も自力で走り続けることができています。DX BOOSTERを導入して約3年が経ちますが、DX推進を担当する我々だけでなく、職員全体としても明らかに意識が変わりました。
▶︎お取り組み内容の詳細は、DX BOOSTER公式サイト掲載の事例記事をご覧ください
地域事業者様の業績面にも寄与できる信用金庫を目指して
ーー Webサイトのリニューアルをきっかけに、「全職員および地域事業者様向けのDX研修を実施したい」とのご相談をいただいたと伺いましたが、その狙いについてお聞かせください。
新宮信用金庫 和平:
デジタル人材の育成を自身でも体験したことで、「デジタルマーケティングのスキルや知識、自走する力は、全職員はもちろん、お取引先の地域事業者様のビジネスにおいても、今一番必要とされるものではないか」と思い至ったことがきっかけです。
地域全体でさらに成長していくためには、一部の担当者がデジタル化やデジタルマーケティングの知識・スキルを持っているだけでは不十分です。立場や職種を限定せず、より多くの人が身につけることで、同じ目線での会話が可能になり、そこから効果的な施策が生まれ、結果として、地域事業全体の成長速度を速めることができると考えています。
シナジーマーケティング 足立:
まさにおっしゃるとおりです。共通言語化することで、課題の発見や課題解決施策の考案・実施の精度および頻度があがり、PDCAの回転が速まることで、目指す成果が出やすくなっていきます。
新宮信用金庫 和平:
DX研修の実施をシナジーマーケティングさんに相談したところ、「デジハイク」をご提案いただきました。我々が求めている研修の理想像に近い、つまり、参加者全員が顔を合わせる集合研修型かつ講義と実践(ワークショップ)の両方が学べるカリキュラムだったので、実施を決めました。地域事業者様23名と当庫の全職員(窓口業務担当者含む)79名に対して、それぞれ実施しました。
新宮信用金庫 前山:
デジハイクの研修スタイルは、我々が「全職員を対象にDX研修を実施したい」とご相談したことで生まれたと伺いました。当庫がシナジーマーケティングさんの新サービス誕生のきっかけになったとのこと、大変うれしく思っています。
シナジーマーケティング 足立:
うれしいお言葉をありがとうございます。新しいサービス誕生のきっかけをいただき、大変感謝しております。
新宮信用金庫 和平:
こちらこそ、要望を形にしていただき、ありがとうございました。デジハイクが大変好評だったことから、2023年からは、営業活動を行う渉外担当の職員向けにもう一歩踏み込んだ営業研修も実施しました。
シナジーマーケティング 足立:
営業研修では、お取引の地域事業者様向けにデジタルマーケティング施策の提案書を作ることをゴールにしていました。約1年かけて、デジタルマーケティングの概念を学び、企業が必要とする施策を考える力を養う、といった内容です。こちらもお客様のビジネスを支援する目的ですよね。
新宮信用金庫 和平:
はい。渉外担当がデジタルマーケティングのスキル・知識を持てば、金融面だけでなく、お客様の経営課題に寄り添い、解決に向けたアイデアを提供できるようになります。早くも成果は現れていて、今年の4月で2年目を迎える新入職員が、お客様のWebサイトの課題をおまとめし、改善策をご提案することができました。
全職員にDX研修を実施したことで、職種の垣根を超えた連携が生まれ、より手厚くお客様を支援する体制ができあがりつつあります。デジタルリテラシーの底上げが、組織力全体の強化にもつながっていると感じています。前述の「長期3か年経営計画」では、「組織力の向上」もテーマに掲げているのですが、デジタル化と連動してこちらも達成できる見込みです。
新宮信用金庫 前山:
一連の取り組みで、かつてないほど他部署とのコミュニケーションが活発化しています。デジタル化やデジタルマーケティングの課題感・重要性などを全職員で共有できたことは、とても大きな成果です。
加えて、お客様からもさっそくDX推進のご相談が複数寄せられており、地域活性化に向けた取り組みが形になりつつあることも成果のひとつです。今までの取り組みは間違っていなかったと、改めて実感しています。
新宮信用金庫 和平:
今後は、我々が地域事業者様とシナジーマーケティングさんをつなぐ架け橋になることで、双方のさらなる事業成長にお力添えしたいと考えています。そうなれば、数年後には、この地域の産業も劇的に変わっているはずです。地域事業者様の金融面だけでなく、業績面にも寄与できる新たなDX推進サービスを当庫として生み出すことができ、とてもうれしく思っています。これもシナジーマーケティングさんにここまで育ててもらったからこそ、実現できたことです。
地域活性化と金融機関としての成長を両立していく
―― お話しを伺っていて、デジタル化やデジタルマーケティングの業務を自力でできるようになることは、地方の金融機関様や事業者様にとって大きな強みになるのでは、と感じました。
新宮信用金庫 口地:
そうですね。一口に金融機関といっても地域によって課題はさまざまですが、ことDX推進に関しては共通の課題です。近年デジタル化はますます加速しているので、我々のようにDX人材を採用しづらい業界・業種であってもDXを避けては通れません。その点、採用に頼るのではなく、現職員をデジタル人材に育成できるDX BOOSTERは、とても良い選択だと思います。
また、地方は地域産業が活性化して雇用が増えなければ、人口流出に歯止めをかけることができません。当庫が提供しているような地域事業者様へのDX支援は、国内外の観光客誘致や取引先拡大などを実現できる可能性が高いため、地域活性化に有効な手段だと考えています。
新宮信用金庫 和平:
我々は地域に根差す信用金庫として、過去から連綿と続くぬくもりのある営業活動を大事にしながらも、デジタル世代へのアプローチも重視しています。当庫の理事長も、「地域に根ざし、さらに発展していくために、デジタル化を力強く推進していく。必ずやり切る」と強い意欲を示しており、職員もその方針に賛同し、注力しています。全職員がデジタル化やデジタルマーケティングの概念を理解し、スキル・知識を得たことで、業務へのモチベーションもあがりました。このような地道な積み重ねが地域産業にも良い効果をもたらし、地域活性化に向けた良い循環につながっていくと信じています。
これは決して、当庫が特別だからできたことではありません。金融機関や事業者様も、「必ずやり切る」という覚悟を持って日々粘り強くDXに取り組むことで、同様の結果が得られるのではないでしょうか。
―― 最後に、当社に期待することや今後の展望についてお聞かせください。
新宮信用金庫 和平:
シナジーマーケティングさんに支援していただいたおかげで、何から、どのように手をつけていいかわからない状態から、この3年で大きく状況が変わりました。DX推進に携わる職員は厳しい日々もあったと思いますが、自ら考えて成果を出すための行動を起こせるようになりました。2021年の段階で、DX推進の施策を外部にすべて依頼してしまっていたら、新宮信用金庫の未来はとても厳しいものになっていたはずです。シナジーマーケティングさんには大変感謝しています。
地域事業者様を金融面で支援するのが信用金庫の仕事ですが、当庫は金銭面を支えて終わり、ではなく、事業面をも支援できる身近な存在でありたいと考えています。デジタルマーケティングのスキル・知識が全職員に備わったので、これからはいよいよ結果を出していくフェーズ、つまり、より地域に貢献していくフェーズに入ります。
2024年からの次期3か年計画では「DX推進」と「全職員の意識改革」を掲げています。必然的にシナジーマーケティングさんには、この2柱を一緒に担ってもらうことになるので、これからも変わらぬ支援をお願いしたいですね。当庫は、我々が目的を達成するまで決して支援の手を緩めないシナジーマーケティングさんという心強いパートナーとともに、よりよい未来を目指して活動していきます。これからも、ぜひ力を貸してください。
シナジーマーケティング 足立:
大変ありがたいお言葉です。常にプロジェクトの先を見据えて行動される新宮信用金庫の皆さんとDX推進のプロセスをご一緒できることは、私たちにとっても非常にエキサイティングな経験です。加えて、経営課題解決のパートナーとしても見ていただいているとのこと、大変うれしく、また光栄に思っています。これからも引き続き、密にご支援してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします!本日はありがとうございました。
シナジーマーケティングは新宮信用金庫様のパートナーとして、これからも共にDXを推進していく
―― 当社によるご支援も4年目を迎え、さらに踏み込んだデジタル化およびデジタルマーケティングの支援をさせていただくフェーズに入りました。これからもDX推進のパートナーとして、新宮信用金庫様の理想実現のために並走させていただきます。
DX事業部 DXBG 足立:
新宮信用金庫の皆さんが熱意をもって全力でDX BOOSTERの課題に取り組んでくださり、一緒に成長している手ごたえを感じています。信用金庫としての発展だけでなく、地域の発展までも視野に入れた未来への活動のパートナーとして見ていただけているとのこと、大変光栄に思います。引き続き、よろしくお願いいたします。
金融ソリューション事業部 ビジネス開発G マネージャー 杉本:
お客様の先の、そのさらに先のことを考えていらっしゃる皆さんの姿勢に、大変共感いたしました。地方の金融機関様や企業様も、「デジタルリテラシーを高めずにいると、今後どうなってしまうのか……」と危機感を持っておられ、デジタル施策への意識はますます高まっています。これからもパートナーとして、地域のお客様の課題をいっしょに解決させていただければと思います!
金融ソリューション事業部 部長 土居:
私たちは今まで、「お客様からのお悩みや課題に適したツールを提供しても、なかなかお客様が期待される効果が出るまでに至らない」「デジタルリテラシーが低いままだと、せっかく導入したツールを適切に使いこなしていただけない」といった現実の壁に、幾度となく阻まれてきました。
そんななか、新宮信用金庫様は、デジタル人材を育成するDX BOOSTERに対して真正面から取り組み、望んだ成果を出してこられました。「お客様の課題に寄り添う」という目指すベクトルは、業種は違っていても私たちシナジーマーケティングと同じだと感じています。これからも、よろしくお願いいたします。
(取材/編集:経営推進部 ブランドマネジメントチーム)