FANという言葉を旗印に。パートナー AKINDと振り返るビジョン・ミッション刷新、カルチャー構築のストーリー

Culture

創業以来20年にわたり「101点のサービス」というバリューを大切にしてきたシナジーマーケティングは、2021年にビジョンを「人と企業が、惹かれ合う世の中へ。」に、ミッションを「Create Synergy with FAN」へと刷新。さらには社員の行動基準である A Sense of Values もアップデート。2年間にわたって会社の組織文化づくりに取り組んできました。

なぜ、ビジョン・ミッションを刷新することにしたのか。リニューアルするにあたってどのようなストーリーがあったのか。新しい A Sense of Values はどうやって生まれたのか。

一連のプロジェクトに社外からパートナーとしてご尽力いただいた株式会社AKIND様のオフィスにて、副社長の奥平とAKIND代表の岩野様 がこれまでの歩みを振り返りました。

(取材・編集/シナジーマーケティング ブランドマネジメントチーム)

プロフィール

岩野 翼 / 株式会社AKIND(あかいんど) 代表取締役CEO

英国のBrunel University ブランディング&デザイン戦略修士課程修了。ブランド・コンサルティング会社 CIA Inc.に参画し、日本発LCCのPeachのブランド立ち上げなどを手掛ける。2014年にブランド・マネジメントに特化した株式会社AKINDを神戸にて創業。ブランディング手法をベースに、対話型組織開発やサービスデザインのアプローチを組み合わせ、変化に強いブランドの共創を実践している。

奥平 博史 / シナジーマーケティング株式会社 取締役副社長

兵庫県出身。経営学修士(MBA)。大手建築会社、通信系営業会社を経て2009年にシナジーマーケティング入社。クライアント企業へのCRM導入ディレクターからマネジメントを経て、2017年に取締役副社長に就任。各事業部に加え、経営・人事・財務など全社のDXを推進すると共に組織やカルチャーづくりなど、D&Iの実現に向けた組織作りに邁進中。

いまあらためて「FAN」と言う言葉に向き合う決意

奥平:
ビジョン・ミッションのリニューアルのきっかけは、2014年より子会社として参画していた Yahoo! JAPAN グループを2019年に離れたことです。独立起業としてこれまでの20年間の資産を生かしつつ、どうやってマーケットに新しいインパクトをもたらして存在意義を出していくのか。今一度、考え直してみようと。どういう道筋でどういう山を目指すべきなのか、という根本的なところから役員3人で徹底的に議論しました。

岩野:
合宿までして、半年ぐらい侃々諤々されたと聞きました。

奥平:
はい。例えば当時の Yahoo! Japan グループ時代に設定したミッション「企業とお客様をつなぐ “No.1コミュニケーションプラットフォーム” になる。」には、これまでやってきたこととこれからやろうとしていることとの乖離があることに気がつきました。ビジョン・ミッションは、マーケットや社員に対する我々の意思表明ですから、これを変えないと何も始められません。

ただ、我々だけではなかなかいい言葉が見つからず、改めてコンセプトワークから当社が目指したい方向性を言語化・構造化してビジョン・ミッションを導き出すサポートをAKIND様にお願いしました。岩野さんは当時を振り返っていかがですか。

岩野:
お客様に正しい情報を伝えてハッピーになってもらいたいという創業時の思いと、マーケティングオートメーションが重宝される今の時代への違和感と、生活者個人が主体となってデータを持つべきだという未来に対する洞察が一気通貫していると感じたのでとてもお手伝いしやすかったですね。弊社と価値観も近かったですし。後は御社が培ってこられたその土壌にどの種を植えて、育てるかというだけでした。ワークショップでみなさんの思考の厚みをときほぐしていくのが、試合に挑んでいるようでとても面白かったですね。

奥平:
こちらも岩野さんと何度も対話を重ねたおかげで、スムーズに思考の整理ができました。特に、企業と生活者は対等でありシナジーマーケティングはそこに価値を見いだしていく、という新しいビジョンに通じる考えがまとめられたことは大きかったと思います。

岩野:
一方で新しいミッションに「FAN(ファン)」という言葉を使用するにあたって、一過性のトレンドや手法ではなく、御社の場合は企業と生活者が対等に惹かれ合う関係性のことをFANと言いたい、という議論がありましたよね。限定的なファンマーケティングに矮小化することには違和感があるとおっしゃられて。

奥平:
昔からCRMにおける企業と生活者の理想的な関係はFANのような関係だと思っていましたが、改めてこのタイミングでミッションの中に、さまざまな解釈があるFANという言葉を掲げるべきなのか、非常に悩みました。私たちは企業様のマーケティング活動に伴走して支援をさせていただく会社です。私たちの目指すFANづくりが企業様にとって押し付けにならないだろうかと。

岩野:
その葛藤を知っていたので最終的にミッションの候補案の中から役員のみなさんが「Create Synergy with FAN」を選ばれたとき、僕の中で「おおっ!」となりました。

奥平:
今できることや今見えていることより、中長期的に目指す世界観を考えたときに、FANという言葉はやはり外せない、と覚悟を決めました。役員一同、何かひとつ乗り越えたものがあったと思います。

岩野:
シナジーマーケティングはデジタルマーケティングの全領域に対応されていますが、創業よりずっと、企業とその顧客間の関係性の構築に大きな実績と自信があり、その先のエンゲージメントといわれるFANとなる領域をも見据えていることに強みがある会社です。外から見るとFANという言葉を使うことはとても自然に見えました。

奥平:
FANという言葉と実際の現場での仕事にギャップがあるのではないか、という心配がありました。岩野さんには社員や過去のお客様へのデプスインタビューも実施していただきましたが、そのうえで「Create Synergy with FAN」という案を提案してくださったということは、社員と日々の業務の現場にもFANという言葉がはまると思われたのですか?

岩野:
そうですね。社員のみなさんは常に、お客様にとってプラス1点とは何だろう、と考えておられて。世の中の多くの企業は、企業と生活者が対等の立場で惹かれ合うという状態はまだイメージできていないわけですが、その意識が変わったときすぐに、企業とFANとの共創を支援できる体制が御社には整っています。101点のサービス、すなわち目の前のニーズにプラス1点を考えることが御社らしさであり、そのカルチャーが根付いているので問題ないと判断しました。

仕事のやり方を示す羅針盤としてのカルチャーづくり

奥平:
こうして2021年1月に新しいビジョン・ミッションという旗を掲げることができましたが、もちろんそれで終わりではなく、経営陣含め従業員全員が自分たちの考えや行動をアップデートして、日々の業務に取り組んでいる状態を作らなければならないと考えていました。まずは人事の機能を経営戦略に統合して両輪で回しやすい体制を整えようとしていたとき、岩野さんからカルチャーマネジメントのお話をいただきました。

岩野:
インタビューの結果、社員の方々は自分たちがどの方向に進めばいいのかのビジョンを経営が指し示してくれることを期待していることがわかりました。みなさんすでに会社のことを本当に信頼しておられたんです。そして正しいかどうかはやってみなければわからないというチャレンジ精神も持っていました。お客様のためのプラス1点を常に考えているし、先に求められているものを見るカルチャーもある。それなのに行動基準、御社でいうところの A Sense of Values(以下ASoVs)に新しいビジョン・ミッションとの距離があると私は感じました。

奥平:
「カルチャーマネジメントって何ですか?人事制度を変えるということですか?」という質問をしたことを覚えています。カルチャーという言葉を正しく理解できていませんでした。

岩野:
カルチャーというと、ふんわりしたものと思いがちですからね。

奥平:
岩野さんが「カルチャー=仕事のやり方を示す羅針盤なんですよ」とおっしゃったとき、私の視界は一気に晴れました。私たちは新しいビジョン・ミッションをさっそく具体的な人事制度に反映させようとしていたのですが、いきなり制度にしてしまうとビジョン・ミッションが持つ未来への広がりやワクワク感をもたらすのが難しいんですよね。

岩野:
はい。そこで私たちからは、新しいビジョン・ミッションに沿った「仕事のやり方」に意識をおいて、行動基準であるASoVsをアップデートしましょう、しかも社員目線で共感できるものにしていきましょうと、ご提案いたしました。

奥平:
このプロセスには私たち役員は口を挟まず、AKINDさんと当社のマネージャー7人にASoVsのアップデートを託すことにしました。

岩野:
ASoVsのアップデートに携わったマネージャー7人のことを私は「カルチャー7」と命名させていただきました。元々のASoVsは創業者の谷井さんが書かれたものですよね。創業者が会社を作るために考えた言葉をマネージャーたちが協力して書き換えるってなかなか大胆な行為だと思うんです。その責任ある使命を信頼してマネージャーたちに任せきったのは大きなご決断だったと今でも感心しています。

奥平:
ASoVsは社員の行動基準ですし、次の世代に熱意を託したいという気持ちもありましたから。結果として役員が一切介入しないというアプローチが今に生きていると思います。私たちには見えていないことの気付きもありました。

行動指針のアップデートで見えたシナジーマーケティングの底力

岩野:
「カルチャー7」のみなさんからは「自分たちに託された」という意気込みを感じました。それがすごく大切なんですよね。会社は役員が作っているものという認識から、自分たちが会社を作っている当事者である、と実感したわけですから。

奥平:
ワークショップは3ヶ月間かけて行われましたが、その期間に端から見ていてもマネージャー達の発言や目つきがどんどん変わっていって。

岩野:
「カルチャー7」とのワークショップでは、創業から20年経過してなお受け継がれるべきシナジーマーケティングの根底にある思想を大切にしながら、新しいビジョン・ミッションを具現化するためにどのような表現や解釈にアップデートするか。現場の課題を見極めながらアイデアを出し合いました。全員が自分ごとを超えて、ASoVsをどう活用するか考え、一緒に言葉を紡いでいきました。また同時に、7つあるASoVsの並び順についても議論を重ね、 Challenge、Innovation という攻めのカルチャーにあたる言葉を先頭に並べ替えました。

奥平:
私も他の社員と同じように、新しいASoVsが発表された全社集会の当日にその内容を知りました。元々は創業者から社員への訓示であったASoVsですが、主語が「私たち社員」になったことでこんなに変わるのか!と本当に驚きました。

岩野:
ワークショップは予定調和ではなく、ひとりひとりが自分のキャラクターや特性を活かしながらコンセンサスを取り、お互いをリスペクトしながら、スムーズかつ高度な議論が繰り広げられました。それぞれの個性が立っているし、役割が明確、強みも違うので、コラボレーションしたときにすごいチームができるなと。これが「シナジーマーケティング」という会社の力なのだな、と実感しました。役員の方たちとのワークショップとはまたちょっと違う、いい試合をさせてもらいました。

奥平:
マネージャーたちからも「普段話すことが少なかったマネージャーの新たな一面を知ることができた」「膝を突き合わせて会社の未来を議論することで横の一体感が強まった」という声がありました。また、岩野さんのファシリテーションやロジカルな整理も大変刺激的だったようで、さっそく自分の仕事に取り込んでいるマネージャーもいます。

私自身もこの取り組みを通して、社員全員が「決断」をする機会を生み出すことの大切さを感じました。会社の重要な決め事だから役員が決めなければ、ではなく、機会をマネージャーやメンバーに託すことで、自分たちが会社のカルチャーを創り出す担い手であるという意識を持ってもらうことができました。こうやって経営と社員が有機的に繋がっていくのだと思います。

カルチャーマネジメントの取り組みはまだまだ道半ばですが、最初の1年でとても大事なことを教えてもらうことができました。

役員・マネージャーがAKIND様のサポートのもと取り組んだビジョン・ミッション・行動指針(A Sense of Values)の更新。つづく後編では、この新たな旗印を活用した現在進行系の取り組みと、カルチャーマネジメントを事業の自立・成長につなげるためのアイデアについてお話しいただきます。

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