情報サービス産業基本統計調査(一般社団法人情報サービス産業協会、2020年版)によると、ITエンジニアの女性比率は22.9%、管理職比率は6.3%。まだまだ少数派だといえます。
そんな中、シナジーマーケティングでは2020年1月に、馬場さんが開発部門のリーダーであるCTOに就任。このインタビューではCTO就任から約2年経った今の気持ちや、これからやりたいことなどを、ざっくばらんにお話しいただきました。
(聞き手:経営推進部 ブランドマネジメントチーム 森内)
クラウド事業部 最高技術責任者(CTO)馬場 彩子
2001年に四次元データ(現シナジーマーケティング)に入社。クラウド型CRMシステムSynergy! の初期から開発に携わったのち、2011年より研究開発グループに所属、2020年1月にCTOに就任。エンジニア、開発チームの立場から事業推進に貢献している。
やってみたいという気持ちと好奇心だけで、CTOに立候補!
森内:
今日はよろしくお願いします。まずは2019年に、CTOを打診されたときのことを教えてください。
馬場さん(以下、馬場):
ごめんなさい。実は「CTOをやってくれませんか?」じゃなく「私、CTOをやりたい」だったんです。当時の親会社のヤフージャパンとのプロジェクトが終了になったタイミングで、たまたまCTOのポストが空いていて。それで、立候補しちゃいました(笑)。
さらに正直に言ってしまうと、その時点でCTOとして特別にやりたいことがあったわけじゃなかったんです。ただ、開発の力を事業にギュッとつなげられたらみんなが幸せになるんじゃないかな、という考えは前からあったんですよね。それに、「CTO」というタイトル(肩書き)があったら、なにができるんだろう、どういう世界が広がるんだろう、という好奇心もあって。
森内:
すべてが、いいタイミングだったんですね。
馬場:
この頃、普段から業務で話すことが多い岡村さん(現・取締役 クラウド事業部部長)に「どうやったらCTOになれるのか」を相談していたのですが、そのタイミングで岡村さんが取締役に就任して。びっくりするくらいトントン拍子で話が決まったんです。
GM(グループマネージャー)すらやったことがなかったのに。でも、初めてついた役職がCTOっていうのも、おもしろいですよね。
森内:
馬場さん、意外と策士ですね(笑)
馬場:
結果的に(笑)。250人規模の会社のCTOをやるなら、今しかない、とも思ってたんですよね。ヤフーからグループアウトしたすぐあとだったので、やらなきゃいけないこともないし、もともと「CTOは必ずしも置かなくても良い」と考えられていたところに立候補したので期待値もほぼゼロ。リスクがないならやってみたい!とシンプルに考えたら、絶好のチャンスじゃないか、と。
森内:
ちなみに、岡村さんはこの頃を振り返り「たしかにその時期は、コアビジネスを強くするために必要なピースは何か、と私自身も常に模索していたタイミングではありました。(が、、馬場さんと何を話していたかというと、、ずっと笑いながらビールを飲み続けていただけのような…)」とおっしゃってました(笑)
いずれにしても、良いタイミングに良い人がはまった感じだったんですね!
Synergy!をリビルドする意味、ありますか?
森内:
Synergy!のリビルドがそろそろ一区切りつきそうだと聞いたのですが、このプロジェクトは開発側が提案したものだったのでしょうか?
馬場:
Synergy! は私も開発に携わった17年前からずっと、継ぎ足し継ぎ足しながら使い続けているので、巨大で複雑になりすぎていた部分もありました。近年はずっとこういう状況だったので、作り変えなきゃいけないよね、みたいな話は前からあったんです。
一方で、ちょっと迷いもあって。2019年頃は、(当社が創業時より標榜してきた)CRMという概念は果たしてこれからも世の中に必要とされるんだろうか?と思っていたんです。そのCRMをこれから新しい技術で作り直すのって意味あるのかな、とも感じていて。
そんな気持ちの中でリビルドが始まったのですが、2020年に新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから、大きく考えが変わりました。
外出もままならない状況、つまり、「出会い」が貴重になった今こそ、一度縁があったお客さまとの関係を丁寧につないでいく活動=CRMの重要性が高まっているのでは、と感じるようになって。加えて、オンラインだけでできることという意味でも、わたしたちのCRMソリューションの出番だ!と思いました。
こんなふうにまだまだ価値提供できそう、と考えたら、Synergy!のリビルドはやるべきだし、やってよかったなと思えるようになりました。
*馬場さんがCTOになって最初の1年間を振り返ったブログも公開中です!
変わらないもの、変えたいもの
森内:
Synergy!をリビルドしている最中に、会社のビジョン・ミッションが新しくなりましたよね。率直に、馬場さんはどう感じましたか?
馬場:
「Create Synergy with FAN」というミッションに、製品名の”synergy” という単語が入っているので、わかりやすかったです。言葉の意味通り「協調」という解釈もできるし、Synergy!というプロダクトをファン(お客さま)と一緒に創るというふうにも捉えられますし。
森内:
「Create Synergy with FAN」を「Rebuild Synergy with FAN」と考えれば、自分たちのやりたいようにエンジニアリング的なエゴで作るわけではなく、ファン、お客さまが使いやすく、要望がより叶えられる基盤を作る、という理解もできますね。
馬場:
そのとおりですね。反面、新ビジョンの「人と企業が、惹かれ合う世の中へ。」は、Synergy!というプロダクトだけでは実現するのには遠いと感じました。
ただ、Synergy!で積み重ねてきた資本や技術的な基盤があるからこそ当社はトライ&エラーができる、という意味では Synergy!はシナジーマーケティングという会社のベースになるものですよね。ビジョンの世界観を実現するためには、Synergy!は必要不可欠だと思っています。
Synergy!が今のままでいい、と考えているわけではありません。たとえば、今までのSynergy!では、アクセスが集中したときにシステム全体がダウンしないよう、アクセスを制御しています。これは、クラウドでサービスを提供する以上、ある程度は必要な措置だと考えていますが、マーケティングに積極的にとりくんでいるお客さまからすれば「もっとやりたっかったのに、もっとここで成果を上げたかったのに」と感じることもあると思うんですよね。
こういうことにまずは気づいて、「本当にできないの?」、「できるようにしようよ」みたいなやりとりがエンジニアリングの現場でも自然に生まれるように、ちょっとずつ変えていけるといいなと思ってます。
変えたいことと言えばもうひとつ、事業としてSynergy!というプロダクトがシナジー(相乗効果)を生めていないところも課題だと感じています。たとえば、現状のオンボーディングプロセスでは、人(=当社の営業やカスタマーサクセス部門)がシステムの使い方をユーザーに教えているのですが、それがすごく悔しいんです。
森内:
たしかに、今どきならシステムで完結できることを人が関わりすぎている感じはありますよね。
馬場:
そうなんです! 人が力を注ぐべきはそこじゃないですよね。
デジタルマーケティングが難しくなってきているので、営業やカスタマーサクセスによるツールのオンボーディングやサポートも必要だとは思いますが、本来なら「メルマガは誰に出したらいいの?」とか「メール本文には何を書いたらいいの?」という、ツールだけじゃ解決できないところに、もっと当社の「人」の強みであるホスピタリティやコミュニケーションを費やしてほしいんです。
開発がイケてるシステムをつくり、営業はデジタルマーケティングのプロとしてお客さまをサポートする。そしてお客さま自身も、マーケティングに真剣に取り組む。こうした好循環とシナジー効果が生まれれば、デジタルマーケでの「成果」という価値をもっとたくさんお客さまに提供できるのではないかと思ってます。
あえて「ごちゃまぜ」にして、事業を前に進める
森内:
Synergy!を通してシナジーを生むために、開発チームとしてどんなことをしていきたいですか?
馬場:
私たちが最初のSynergy!を作った頃から仕事の進め方が変わっていないのが課題だと感じていて。5人のときなら、みんなで集まってわーって話をしたら意思疎通できていたんです。でも、今、50人の状態でそれをやるには無理があるんですよね。最終的に誰が決めるのかがわからなくて、決断が遅くなってしまうこともありますし。
プロダクトや開発内容そのものは必要に迫られてどんどん変わっていっているのに、組織が追いついていない状態だと思っていて、ここは変えていきたいなと。まだ手を付け始めたばかりなのですが、もう5捻りくらいしたいですね。
森内:
5捻りとは…! 一人ひとりのエンジニアについてはどうですか?
馬場:
うちのエンジニアは本当に、真面目で、誠実で、優秀で。そのおかげでSynergy!はとてもしっかりしたプロダクトになっているんです。
だからこそ、もったいないなと感じています。たとえば、完璧な機能やきれいなランディングページを作ろうとしたら、時間がかかってしまいますよね。それ自体が悪いわけではないのですが、時間をかけた結果それが、お客さまや自社の事業に貢献できていなかったら意味がないんです。
ここは発想の転換をするべきなのかなと。2年も3年もかけてこの機能しか作れないのなら、それは作ろうとしているものが間違っているかもしれない、と立ち止まって考えてみたほうがいいと思うんです。完璧を目指すのではなく、とりあえず動くものをつくってみよう、とかね。
新しい行動指針(A Sense of Values)の発表イベントでも話しましたが、クオリティよりもスピードを意識なくちゃいけないよね、ということです。
*行動指針(A Sense of Values)のリニューアルについては、こちらの記事もご覧ください。
森内:
あの発言には、馬場さん以外のカルチャーリーダー(事業部長)全員が「ハッとさせられた」と言ってました。
馬場:
「クオリティよりもスピードを意識する」というのは、社内のみなさんがわたしたち開発組織に対して「もっと早くできないかな」と感じているんじゃないかと思っての発言だったんですけどね。
開発の仕事って、日々、何かの機能を直したりとか、平常運転させるだけでけっこうたいへんなんです。でも、外から見ると変化が少なくて、何もしていないように見えてるんじゃないかなあと。
ここも、すごくもったいないと思っています。せっかくならエンジニア自身に、自分の仕事がダイレクトに事業に繋がってると感じてほしいし、他部署のメンバーやお客さまから「こんなことできるなんて、すごい」って言われたいじゃないですか。
そのために必要なのは、技術力を上げることではないんですよね。50人でのコミュニケーションをどうするかだったり、決断を早くできるようにしたり、事業の理解を深めることだったり。そこを変えていくと、外から見たスピードが上がって、みんながハッピーになるんじゃないかなと思ってます。
求められているものをちゃんとアウトプットするのも大事ですよね。セールスが「お客さまに早く紹介したい」と思う機能を作るだけじゃなく、どのくらいのスピード感で対応すれば喜んでもらえるのかというところも、しっかりとマッチングできるようにしたいなと思っています。
森内:
アウトプットというと、馬場さんは毎週社内報で、勝手に「Weekly Engineering News」を連載していますよね?
馬場:
期待値ゼロの状態でCTOになったので、いろいろやってみようと思って(笑)。なにより自分自身が楽しんでやっていますが、私が発信することで今までの開発チームになかった空気を作りたいという意図もあったりします。
いわば、かき混ぜ役、余計な仕事を持ってくる役ですね。余計な仕事を持ってくることで、「自分たちの仕事はここだ」というふうにキュッとちっちゃくまとまってしまっているのが、少しでも開放されるんじゃないかと思っていて。
Synergy!をきっちり運用していくということだったら、今までのまま任せてやったら上手くいくと思うんですけど、いま求められているのは、そこだけじゃないんです。だからこそ、私が先頭に立って、発信して、壊して、やりにくくして、そしてみんなを巻き込んで進化させる、というところをやらなくちゃいけないと思っています。
森内:
アグレッシブなリーダー、いいですね!これからの馬場さんのチャレンジを楽しみにしてます!