UXデザインで変わる Synergy! プロダクトマネジメント奮闘記

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こんにちは。ブランドマネジメントチームの森内です。

いま、当社の主力事業であるSynergy! のプロダクト開発(ビジネス・企画・エンジニアリング)現場ではUXデザインがアツい!・・という噂を聞いて、その中心人物であるプロダクトマネジメントGの山本さんに、その取り組みについて話を伺ってきました。

山本さん(クラウド事業部 プロダクトマネジメントG UXデザイナー)
北海道出身。大手ITベンチャーでソーシャルゲームのデザイナーから2018年にシナジーマーケティングに入社。
以来ずっと Synergy!プロダクト開発に携わっている。5月に育休から復帰したが、在宅ワークを続けながら育児とお仕事の両立に奮闘中。

安定稼働を続けていた Synergy!プロダクト開発のターニングポイント

ーー 山本さんが入社された2018年頃のSynergy!プロダクト開発の状況を教えて下さい。デザイナーとしてどのように感じられていましたか?

山本:
これは転職したみなさんが感じることなのですが、シナジーマーケティングは、まじめに丁寧に自分の仕事をする方々が集まっている組織だと思いました。また、企画にも開発にも、個人としてとても優秀な人たちがたくさんいると感じました。

一方で、部門と開発プロセスが縦割りであったため、営業・企画・デザイン・エンジニアリング・マーケ、それぞれの部門がお互いの仕事のことをあまり理解していないことに少し驚きました。例えば、デザイナーは決められた仕様に沿って最適なUIを作ってエンジニアに渡すだけの作業者になっていました。

また縦割りのもうひとつの影響として、プロダクトの戦略や方針は、経営からマネージャーを通して下ろす形でそれぞれの部門に伝えられており、部門ごとに伝える情報が違っていたり、共通認識がずれていることも多かったです。

そのために、売上を上げたい、技術的負債を解消したい、UIを統一させたいなどの各部門のやりたいことに、優先順位をつける事ができず、いたずらにトライアンドエラーや承認のステップが多い状況でした。

このような縦割りで堅牢な組織体制は、お客様の情報をお預かりする重大なシステムをメンテナンスし続けるために有効なアプローチでありましたし、当時はヤフージャパンのグループ会社として守らなければならないことも多かった、という事情もあったのだと思いますが…。

しかし、このままでは競争が激しくなっているBtoBのクラウド市場の中でSynergy!が時代遅れになってしまうという危機感がありました。ユーザーであるお客様に対して、ほしいものを届けられるシステムにアップデート続けられるのかという不安がありました。

前職のゲーム開発では、さまざまな職種のメンバーによるチームが、まるでひとつのスタートアップのように独立裁量を持って常にユーザーと向かい合いながらプロダクトを運営していました。Synergy!でもプロダクト開発に関わるみんなが、同じ場で同じ言葉で同じイメージを見ながら仕事ができるようにしなければいけない、そのためにはSynergy!のUXをデザインしなければならないと感じました。

もちろん、私が入社した頃の現場でも、ユーザーのことをちゃんと観察して分析して理解しようというUXデザインのアプローチが試みられていましたが、縦割り組織体制と、プロダクト全体を俯瞰した戦略が共有できていなかったために、仕事の進め方を大きく変えるまでのインパクトは出せず、もどかしい時期でありました。

ーー そのようなタイミングで、ヤフージャパンからのグループアウトという出来事があったのですね。

山本:
2019年の夏のことでした。そのこととも連動しているのですが、Synergy!プロダクト開発現場としては、役員でもあるクラウド事業部部長の岡村さんとCTOの馬場さんの2トップ体制になったことが大きな変化でした。

Synergy!というプロダクトの戦略策定や意思決定が、シナジーマーケティングの経営本体よりも現場に近い2人に委ねられたため、わたしたちから見ると、ステークホルダーとの距離が近くなりました。

具体的には、ふたりからの戦略や方針についての明確なメッセージが、どの部門にも同じタイミングに同じ内容で届くようになり、その頻度も増えました。

ーー いくつかのプロジェクトが立ち上がりましたよね。

山本:
はい。そのひとつ、NEWTプロジェクト(*)から、私たちデザイナーが狭義のデザイン(UIデザイン)以上に、UX向上のために関わることになりました。

NEWT:基本機能群を中心としたレガシーシステムのモダナイズを行うプロジェクト。2020年4月からスタートしていくつかのリリースを終えながらも現在も継続中。社内ではイモリのロゴで親しまれている。

心機一転!新体制・新プロジェクトは企画フェーズから

ーーー NEWTプロジェクトが始まるときに、山本さんをはじめとするデザイナーのみなさんはどのようなはたらきかけをしたのですか?

山本:
もともとNEWTは「技術的負債を解消してエンジニアの開発体験を良くしたい」というテーマからスタートしましたが、デザイナーからは「作ることだけではなくユーザーへの価値提供、ビジネスメリットの設計(デザイン)まで踏み込んでやりましょう」という提案をしました。

ーーー 具体的にはどんなことにチャレンジしましたか?

山本:
まず、企画フェーズにおいては、Synergy! プロダクトオーナーである部長の岡村さんにヒアリングをしながらNEWTのビジネスゴールをしっかりと言語化しました。

また、最もユーザーを知る営業メンバーにヒアリングをして、基本機能のモダナイズを実現した時に最も効果がありそうな顧客層やユースケースを洗い出しながら、NEWTプロジェクトのターゲットを可視化しました。

その上で、プロジェクトが迷ったりブレることがないように、やること/やらないことを整理しました。

このようにして具体的な仕様策定や開発に入る前に、ステークホルダ全員がNEWTを進める上で判断の拠り所となるようなコンセプトを設計しました。

ーーー 企画フェーズでのUXデザインはこれまでのSynergy!のプロダクト開発ではあまり時間をかけてこなかったプロセスだと思うのですが、難しかったことや気をつけたことはありましたか?

山本:
すべての職種のメンバーが立ち返るプロジェクトの共通言語となる部分ですので、わかりやすさを大切にして、できるだけシンプルに言語化と図表化することを心がけました。

歴史が長いプロダクトほど「事情」や「経緯」がつきものですが、Synergy!立ち上げからずっと関わっているメンバーも、先月新たに加わったメンバーも、同じものを見て同じ理解ができるコンセプトになるようにしました。

ーーー この頃を振り返ってNEWTの推進役であったCTOの馬場さんはこのように話しています。

馬場さん(クラウド事業部 最高技術責任者CTO)

NEWTはSynergy! の再生プロジェクトです。Synergy! は私自身がローンチから携わっているプロダクトであり、NEWT はそれを作り直すプロジェクトだったので、当初は「チームで共通認識をもてている」と錯覚していました。

ただ、今プロジェクトに従事しているメンバーのほとんどは初めてSynergy! の対象機能を開発するんですよね。一度立ち止まって、再生対象の機能が提供する価値/ ユーザ体験をUXデザイナーである山本さんが言語化してくれたことにより、つづく開発がスムーズに進んだと感じます。

“ちゃんと動くもの”から “ちゃんと使われるもの” をつくる組織に

ーーー プロジェクトメンバーが納得できるゴールやユーザー像が可視化されたら次はいよいよ、開発フェーズですね。

山本:
開発フェーズのプロセスには、これまでのUIを作る業務を通してすでに強い課題意識を持っていました。

まず最初に必要なリサーチとして、営業やサポートメンバーへのヒアリングと、利用状況データの分析を通して、機能ごとに顧客ニーズやユースケースを設定。ユーザーにとって必要な機能を精査しました。

次にエンジニアと連携して、要件定義の段階で企画の背景を共有して、実現可能性や課題・リスク等を検証するプロセスを導入しました。

その結果、エンジニアからは「そういうことだったんですね!」という明るい反応があり納得感が向上し、実開発やリリース後に「そもそもこれは何のために開発したんだっけ?」と問われるケースがなくなりました。また、複数の機能の優先順位づけが明確になることでスムーズな開発ができるようになり、スピードや生産性も向上しました。

ーーー 要件定義にちゃんとユーザーの視点を取り込んで、エンジニアも含む全員で要件の本当の意味を共有できるようになったのですね。

山本:
もうひとつ、開発フェーズではアジャイルな開発スタイルになったことに合わせてデザイナーの作業プロセスも見直しました

デザイナーがWF(ワイヤーフレーム)を作成してユーザービリティテストを終えた後でエンジニアがそれを実装していくという従来のウォーターフォール式な進め方では、技術的に実装が難しいためにデザイナーの意図したとおりのUIにならなかったり、手戻りが多くなって開発が進まなくなったりすることが課題でした。

これをエンジニアも含めて段階的にWFレビューをするやり方に変更しました。Figmaで途中の過程をエンジニアに共有して、実現可能性や課題・リスク等をいっしょに議論しながらWF作成を行うようにしました。

ーーー アジャイルな開発スタイルに変えると、デザイナーとエンジニアとの仕事の境目が曖昧になり、コミュニケーション量がすごく増える印象がありますが、ネガティブな反応はなかったのですか?

山本:
開発スタイルを変えることで負荷が高くなることは明らかにした上で、プロジェクトの共有のゴールである開発体験の向上とその先のユーザー体験の向上のために必要な変化であることを説明しました。また、開発のステップの中でどの段階からどのようにどれくらいのイテレーションを回すのかを図示化して調整しました。

このように段階的に取り組んだ結果、エンジニアの方からもどうすればお互いに開発しやすくなるか、ユーザビリティはこれでいいのか、などの会話が徐々に生まれはじめ、よりスムーズな開発ができるようになってきました、過去の進め方では諦めていたようなリッチで難易度の高いUIも実現できるようになりました。

ーーー フロントエンドエンジニアの田中さんからはこのようなコメントをもらっています。

田中さん(クラウド事業部 第四プロダクト開発G)

私はNEWTプロジェクト以前はUXデザイナーと仕事をする経験はなく、常に良いものを作りたいという思いで開発を行っていたものの、それが本当にユーザーにとって良いものなのか、リリースするまではっきり自信を持てずにいました。

山本さんと仕事をするようになり、細かい操作性の議論にも解決すべき課題をはっきりさせ、仮説をたて、ユーザビリティテストを通して検証し、改善を繰り返す開発プロセスが確立されたことで、私たちエンジニアも、はっきりと自信を持って開発を進めることができています。

広がり続けるUXデザイナーの活動範囲

ーーー 山本さんはSynergy!のマーケティングやプロモーションには関わっていないのですか?

山本:
NEWTプロジェクトでは当初は、企画と要件定義と開発のフェーズが私たちデザイナーの担当でした。

しかしこれまでのプロジェクトで、開発フェーズの後半まで詳細がマーケティング担当に共有されていないがためにスポット的なリリースになり、せっかくの機能が最大限にユーザーに伝わらず活用されてない様子を見ていた反省から、開発フェーズからGTM(Go To Market)の検討を組み込むことを提案しました。

先日のリリースでは、開発フェーズからGTMを担当するプロダクトマーケのメンバーと連携して、ユーザーへのリリースのタイミングやオンボーディングフロー、管理画面上でそのパターンをフォーマット化するなどの整理を行いました。

さらに次のリリースでは、ある機能の初期設定のオンボーディングをエンジニアだけではなく、営業やカスタマーサクセスなどの顧客接点のある部門と連携して設計しようと画策中です。

同じ課題やゴールに対して、営業・カスタマーサクセス・開発・マーケティングと社内でばらばらに考えていたことが、今までの大きな反省でした。UXデザインにおいては、ユーザーフローやインサイトについて、プロジェクトメンバーが同じものを見て統一した理解をして足並みを揃える事が重要です。

ーーー プロダクトマーケ担当の兜坂さんはUXデザイン導入をこのように振り返っていました。

兜坂さん(クラウド事業部 プロダクトマネジメントG マーケティング担当)

以前はリリース予定を直前まで把握できていないことが多く、オンボーディング施策の検討も開発への実装依頼もスポット的な実施になっていました。しかし今では、開発フェーズから各部門がしっかりと連携することで、全体感を把握し計画的にGTMの実施ができるようになりました。それぞれが常に同じゴールに向かって進めることができるようになったと感じています。

また、仕事全体を通してデザイナーや開発メンバーとの関わりが増えたことで、いまどのような経緯でリリースに向かっているのか、どのようなUXを期待しているのかを理解することができ、コミュニケーションも円滑になりました。デザイナーがUXを通じて、GTMと開発のハブになってくれています。

山本:
当社のバリューである「101点のサービス」で表現されているように、シナマケの社員はみんなSynergy!を使うユーザーお客さまの力になりたい気持ちを持って、売上だけではなく課題に向き合っています。その点では競合他社と比べてユーザー志向なマインドはもともと備わっているんですよね。

だから、ちゃんと戦略・方針・コンセプト・プロセスなどを組織の共通認識にできればもっと良いプロダクトに進化できると思っています。

ーーー NEWTプロジェクトを通してさまざまな変化が起こったのですね。これを他のプロジェクトにも展開できれば、Synergy!のプロダクト開発はもっと変わっていきそうですが、その上での大きな課題となるのはやっぱり・・・・

山本:
はい。UXをデザインできる人がまったく足りていません・・・!(涙)

UXデザインというと、難しく捉えられがちなのですが、具体的にはこのようなマインドセットを持っている方とお仕事ができればと思っています。

・物事の理由や背景を深く考えたり、分析することが好きな方
・さまざまな職種のメンバーとコミュニケーションを取りながらチームで物作りをするのが好きな方
・根気強くこつこつと進めるのが好きな方
・広い領域にに幅広く関わっていきたい人

もちろん、私自身も日々現場で勉強しながらやっているので、一緒に切磋琢磨しながらSynergy! を磨いていければと思っています。

ーーー デザイナーと言っても実際にPhotoshopやIllustrator を使ってグラフィックデザインをするわけではないんですよね?

山本:
はい。私たちはユーザーがプロダクトやサービスを利用した時により良い体験ができるように設計する立場にいます。UIの使いやすさやデザインもその一部に当たります。

より良いユーザー体験を設計するためには、ユーザーを深く観察して理解したり、物事を俯瞰的に見る必要がありますので、

・大きなプロダクト開発チームの中でUXリサーチを担われていた方
・UXを大事にしたWebディレクションやプロジェクトマネジメントをされてきた方

にも、活躍していただくことができます。

Synergy! は15年以上にわたって3000社以上のお客さま(ユーザー)とその先のエンドユーザー(生活者)に利用されてきたプロダクトですので影響力も大きく、やり甲斐と充実感を得られることは保証します!

ーーー ありがとうございました。UXデザイナーのお仕事に興味を持っていただいた方はもちろん、Synergy!開発についてのもっとし詳しく話を聞きたいという方は、お気軽にご連絡ください!

(取材/編集:経営推進部 ブランドマネジメントチーム 森内)

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