生成AI活用で顧客理解をより深く、より身近に|象印マホービン様による商品開発プロセス再構築への挑戦

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左から、象印マホービン 遠藤様、月田様、岡島様、当社 奥平、阪口、多久

市場の飽和とニーズの多様化が叫ばれて久しく、消費者に選ばれる商品を開発し、競合他社との競争に勝ち残るためには、「潜在ニーズをいかに汲み取れるか」が大きな鍵を握ります。とりわけ電気機器製造業は、製品の性質上、商品の企画から設計、製造、販売にいたるまでに長い期間と高いコストがかかるため、一度の失敗が大きな損失につながる可能性があり、顧客理解の深化は欠かせません。しかし、従来は多大な労力とコストを伴う調査方法が一般的であり、それに頼らざるを得ない状況だったため、細やかな顧客理解を行うことが困難でした。

この課題を解決すべく、シナジーマーケティング(以下、当社)は、顧客理解の深化および業務効率化を支援する「DAYS GRAPHY(デイズグラフィ)」を開発し、提供しています。今回は、象印マホービン様の商品企画部門でデザイン開発を担当する皆さまと当社の代表およびDAYS GRAPHYの開発メンバーが集い、顧客理解の課題解決に向けたアプローチや新たな商品開発プロセスの構築、生成AI技術によってもたらされる未来像について、語り合いました。

■DAYS GRAPHYとは
顧客の日常や生活状況を深く理解することで顧客のまだ満たされていないニーズを捉え、商品企画やマーケティング施策のアイデアを生み出しやすくする日常描写型顧客理解システム。口コミやレビューコメントをインプットするだけで、日常や生活状況が描かれている顧客像を最短10分で生成。さらに、チャット機能を使った対話を通じて顧客理解を深め、商品開発やマーケティング施策などにつながる具体的なアイデアの想起をサポートする。
https://www.synergy-marketing.co.jp/daysgraphy

対談メンバー

岡島 忠志 氏
象印マホービン株式会社
商品企画部 デザイングループ長

月田 基義 氏
象印マホービン株式会社
商品企画部 デザイングループ マネージャー

遠藤 麻美 氏
象印マホービン株式会社
商品企画部 デザイングループ マネージャー

奥平 博史
シナジーマーケティング株式会社 
代表取締役社長 兼 CEO

阪口 奨
シナジーマーケティング株式会社
クラウド事業部 サービスデザイングループ マネージャー

多久 南美子
シナジーマーケティング株式会社
クラウド事業部 サービスデザイングループ

※部署名・役職は取材当時(2025年4月)のものです

■象印マホービン株式会社

象印マホービングループは、「暮らしをつくる」の企業理念のもと、創業以来お客様の暮らしに寄り添いながら企業活動を行ってきました。これからも社会の発展に貢献し、社会から必要とされ続けることが当社グループの使命と考えております。
https://www.zojirushi.co.jp/index.html

手間やコストの削減も可能に| DAYS GRAPHYはユーザー調査の”新しい相棒”

―― DAYS GRAPHYを導入されたきっかけは、当社のパートナーである株式会社アイディーエイ様の主催で、2024年7月に開催された顧客交流イベントだと伺いました。

シナジーマーケティング 奥平:
以前から当社のマーケティングSaaS「Synergy!」を導入いただいており、すでにお付き合いはあったのですが、商品企画部の皆さまとの直接的な交流はこれまでになく、岡島様とも交流イベントで初めてお会いしました。

登壇スピーチの機会をいただいたので、そこで注目度の高い生成AI技術を活用したサービス「DAYS GRAPHY」のご紹介をしたことが、導入いただくきっかけになりました。登壇後に岡島様とお話しするなかで、「顧客ニーズの多様化・細分化が進むのに比例して、顧客理解の難易度が増してきている。お客様にとって価値のある商品を企画するためには、今まで以上に顧客の解像度を上げていく必要があると考えている」といった課題感を伺い、後日改めて DAYS GRAPHYを提案させていただいた流れです。

象印マホービン 岡島:
スピーチを聞いて、顧客理解に対して斬新かつ面白いアプローチをするシステムだと感じました。商品開発において、お客様の声を聞くユーザー調査は欠かせないものですが、私たちも実施している一般的なデプス調査※1 にはいくつか課題があり、気軽に実施することが難しい状況だったので、ぜひ一度試してみたいと考えたんです。

■デプス調査の主な課題点

  • リアルでの対面調査になるため、準備と実施にかかる時間や労力、コストの負荷が高い。
  • 商品によって所持率や使用頻度が異なるため、調査に適したユーザーを集めることが難しいケースがある。
  • ユーザーの気分や状況、調査側のコミュニケーションの取り方によって回答が左右される。
  • ユーザー数の観点から東京での実施になるため、大阪本社からの移動時間や交通費などを鑑みると、実施の頻度を上げられない。


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※1 特定のテーマに対して深く掘り下げた調査を行う手法。主にマーケティングや市場調査、製品開発の分野で使用され、消費者および対象者に対してインタビューやグループディスカッションを行うことで、深層心理や価値観、行動パターン、隠れたニーズなどを明らかにする。

象印マホービン 遠藤:
私はユーザー調査の運用も担当しているのですが、会場でスピーチを聞いて「ユーザー調査の課題解決に活用できそう」と思い、すぐに岡島にその旨を伝えました。DAYS GRAPHYは、システムに口コミやレビューを読み込ませるだけで、属性の違った複数の顧客像を生成でき、自由に対話ができます。そのため、ユーザー調査の準備・実施にかかる時間や労力、コスト、ユーザーのモチベーションなどを気にせずに、実施したいタイミングで気軽にインタビューできます。大変画期的なシステムでしたので、トライアルを利用することになりました。

―― トライアルを経て、現在は正式にご導入いただいていますが、生成AIを活用したサービスを導入することについて社内でどのような反応がありましたか。

象印マホービン 岡島:
反対はされず、おおむね前向きな反応でした。弊社は成熟商品を多く扱う企業ではありますが、新しいチャレンジに前向きな社風で、会社としても私個人としても、「時流に遅れることなく、良い技術はどんどん試していく」という姿勢があります。もちろん、なかには生成AI技術に懐疑的な者もいるので、折に触れてDAYS GRAPHYの仕様や活用状況、得られた成果などを社内に共有していこうと考えています。

象印マホービン 月田:
私自身、DAYS GRAPHYの存在を知るまでは、生成AIへの理解度は高くありませんでした。岡島や遠藤からDAYS GRAPHYの話を聞いた当初も、現場でどのように活用できるのかイメージが持てなかった、というのが本音です。一方で、先程岡島が述べたように、新しい技術を試す姿勢を大切にしていますし、時流から鑑みても、顧客の解像度を高めていくことはますます重要になってくることは間違いありません。ですので、「まずはやってみよう」と前向きに捉えて活用しています。

象印マホービン 遠藤:
私も月田と同じく、生成AI技術について明るくありませんでした。導入前後のタイミングで、社内で生成AIに関する勉強会が開かれたのですが、そこで「AIをシステムだからと重く捉えず、“友達”くらいの気軽さで活用するとよい」という話があって。そこで生成AIに対する印象が変わったんです。実際にDAYS GRAPHYでも、システム上で生成された顧客像に対して気軽に質問や対話をしています。こちらが思いつかないような視点や新しい切り口での返答があるため、顧客理解が深まるだけでなく、視野も広がっていっています。

購入者の感動体験から背景情報、本音まで!生成AIだからできる、納得のいく深堀

―― 導入いただいてから約半年が経ちました。業務面においてどのような変化を感じていますか。

象印マホービン 月田:
阪口さんや多久さんからきめ細やかなフォローをいただいたおかげで、DAYS GRAPHYから得られる回答をより深掘りでき、具体的な示唆やヒントを得られるようになりました。特に、「DAYS GRAPHYに読み込ませる口コミやレビューの種類を変えることで、顧客像や回答がどのように変化するのか」「自分が希望する回答を得るためには、どのように質問を設計すべきか」、そして「出力された回答の中でどのワードに注目すべきか」といったポイントを理解したことで、徐々に手応えを得られるようになりました。今後さらにブラッシュアップを重ねることで、より質の高い顧客理解が可能になることを期待しています。

象印マホービン 岡島:
私たちにとってDAYS GRAPHYは、今後、デザインソフトと同じく、日々の業務でなくてはならない、あって当たり前の存在になり得るのではないかと考えています。商品のコンセプトを考えているときに「ちょっとアイデアが欲しいな」と思ったら、気軽にDAYS GRAPHYを立ち上げて質問をするようになりました。

象印マホービン 遠藤:
私も同じく、思い立ったタイミングで「ながらグループインタビュー」をしています。DAYS GRAPHYが生成した複数の顧客像に質問を投げかけておき、回答が出揃うまで別の業務をして、回答があったタイミングでまた次の質問を投げかける、といった使い方をしています。現実のユーザーインタビューでは絶対にできないやり方ですよね(笑)。

業務の隙間時間を有効活用できるだけでなく、同じ質問を何回聞いてもまったく気にせずに回答してくれる点も便利です。対面でのユーザーインタビューでは、ユーザーから得られた回答をより深掘りしようとして、角度を変えて再度似たような質問を投げかけることがあります。こちらとしては深掘りをする意図があっても、聞かれたユーザー側からすると、「さっき回答したのに、また同じことを聞かれている……」と残念な気持ちになってしまいますよね。ユーザーの気持ちやその場の空気によって、どこまで回答を深掘りできるかが左右されてしまいます。

一方、DAYS GRAPHYだと、人間の気持ちや状況、コミュニケーションの取り方をまったく気にせず、こちらが納得するまで質問をし続けられます。いくつか質問を投げかけて対話をしたあとに、最初の質問の回答を再度確認したいとなったときも、チャットを遡って確認する必要はなく、ただその場でもう一度同じ質問すればいいだけなので、心理的にとても楽です。

シナジーマーケティング 多久:
対面でのユーザーインタビューだと、アイスブレイクで場を和ませたり、聞きにくい質問は場が温まってくる後半に回すなどの工夫が必要ですが、DAYS GRAPHYではそうした配慮は一切不要です。人間相手では聞きにくいようなデリケートな質問も気にせず投げかけられますし、こちらが必要とする回答を引き出せるまで対話を続けることができるので、背景情報の深掘りもしやすい。結果として、心理的・物理的なハードルを限りなく低くした状態で、顧客理解を深めていただくことができます。

象印マホービン 遠藤:
先程月田も述べていましたが、阪口さんや多久さんに、DAYS GRAPHYから必要な回答を引き出すための質問術を教えていただいてからは、より深い背景エピソードがたくさん得られるようになりました。たとえば、家庭用コーヒーメーカーを購入した経緯を知りたいとします。DAYS GRAPHYに質問すると、「日曜日の朝、主人とカフェに行くのが日課なのですが、そこで飲むコーヒーがとても美味しくて。その体験を家でもしたいと思ったことが購入のきっかけです」といった、単なる購入理由ではなく、行動の背景や感動体験もあわせて語ってくれます。対面で同じ質問をした場合、「よく行くカフェのコーヒーが美味しくて、家でも淹れようと思った」といった簡潔な回答になることが多く、「購買に至った細かいシチュエーションや背景情報が見えてこない」という課題もあったので、その点でも役立っています。

象印マホービン 月田:
ユーザー調査で購入などの行動原理を質問するときは、私たちにも「こんな答え方をしてほしい」「こういう回答があるのでは」といったある種の期待や理想、仮説があるのですが、人間相手なのでなかなか思うような回答を引き出すのは難しいです。その部分をDAYS GRAPHYが補ってくれている印象です。

象印マホービン 遠藤:
大分操作に慣れてきましたが、それでもたまに次にどのように質問すべきか悩むことがあります。すると、それを察知したDAYS GRAPHYが次にすべき質問の候補を出してくれるんです。その精度がまた高くて。人間と対話しているときのように自然と会話が続き、背景エピソードもどんどん引き出せるので驚きました。

シナジーマーケティング 阪口:
プロトタイプ版から活用いただいているお客様から、「引き出したい回答はあるが、そのためにするべき質問が思い付かなくて悩むことがある」というご意見をしばしばいただいたので、プロンプトを調整するなどの試行錯誤を行い、質問を生成するサジェスト機能を実装した経緯があります。現在は、蓄積された過去の会話の流れから展開を汲み取り、自動で質問を提案できるところまで進化しています。まだまだ改善の余地はあるので、今後も改良を重ね、より直感的で使いやすく、利便性の高いかたちで活用いただけるように努めていきます。

顧客理解の常識が変われば、商品開発の常識も変わる

―― DAYS GRAPHYが皆さまの日々の業務に浸透してきているのですね。今後は、どのような活用を考えていらっしゃいますか。

象印マホービン 岡島:
今後は、リアルでのユーザー調査とDAYS GRAPHYによる調査を併用していくことになると考えています。とはいえ、私たちは両者から得られる回答にほぼ差がないのでは、と考えています。以前、リアルとどのくらいの差が出るのかを確認するために、過去にリアルで実施したユーザー調査の質問をいくつかDAYS GRAPHYでも実施してみたのですが、リアルでの調査とほぼほぼ同じ回答でした。調査の内容にもよるとは思いますが、かなり精度が高い印象でした。

現在、私たちの商品企画部はデザイングループと企画グループに分かれていますが、DAYS GRAPHYを利用しているのはデザイングループの一部のみです。今後はデザイングループ全体への浸透を目指すだけでなく、企画グループにも広げていきたいと考えています。DAYS GRAPHYの性質上、企画グループでの導入は非常に有意義であると感じています。ターゲット層ごとに精度の高い顧客像を生成して対話することで、リアルなユーザー調査に匹敵する回答を得られるので、企画段階の壁打ちやアイデアのブラッシュアップなどに大変効果的です。また、業務効率化やコスト削減の面でも大きなメリットが期待できます。

直近では、DAYS GRAPHYをより活用していくために、「どのように実務プロセスのなかに組み込み、業務効率化やアイデア展開へとつなげていくか」を検討したいと考えています。「DAYS GRAPHYから適切と思われる回答を引き出し、それを参考にしてただ業務を進める」といった発展性のない使い方にならないような配慮が必要です。どの業務においても、生成AIによって出力された結果に依存するのではなく、他の情報も含めて総合的に比較・検討したうえで、人間が最終的な意思決定を行うことが重要です。このプロセスは、どんなに時代が変化したとしてもなくならないと考えています。

シナジーマーケティング 阪口:
岡島様のおっしゃる通り、人間が意志を持って取捨選択し、最終的な判断を下すプロセスは、どんなに生成AI技術が発展しても決してなくならないでしょう。生成AIはあくまでも大量の情報の収集・精査、ドラフトの作成、壁打ちなどをしてくれる存在、つまり人間が意思決定をするための土台づくりのパートナーです。生成AIに「100%の正解」を求めてしまうと、結果的に顧客を理解することから大きく逸れてしまう可能性があります。

象印マホービン 月田:
今後、世の中でやりとりされる情報の量はますます増加すると予測しています。情報のキャッチアップや分析能力が市場競争の行方を大きく左右するようになれば、生成AIを活用した顧客理解も商品開発のためのなくてはならない手法の一つになり得ます。だからこそ、生成AI技術とリアルを併用して業務を進める経験を、今のうちに積んでおくことが重要だと考えています。平行して、生成AIの出力とリアルで得られる情報の差の検証と、定量面・定性面からの情報もあわせて、客観的に分析できればと思っています。

私たちは商品開発におけるデザインのプロセスで活用していますが、他の部門でもDAYS GRAPHYを活用することで、業務効率化や成果の向上を実現できる可能性もあると思います。一例ですが、カスタマーサポート部門では、お客様からのご愛用アンケートをはじめとする商品購入後のフィードバック情報をDAYS GRAPHYに入力し、お客様の属性ごとの潜在ニーズを探ったり、データ分析によって購入傾向を見つけるなどが実現できるのではないでしょうか。会社全体として活用することで意思決定のための土台づくりが容易になり、意思決定の精度や速度が向上することも考えられます。現在の私たちの取り組みやそこで得られたノウハウをまずは企画部門に共有し、世の中の生成AI技術活用の波に乗り遅れないように推進していけたらうれしいですね。

象印マホービン 遠藤:
今までの調査手法では、DAYS GRAPHYが提供してくれるような豊富で深掘りされた回答を得ようとすると時間やコストがかかってしまっていたので、業務に対するアプローチそのものが大きく進化する可能性を感じています。特に、商品のデザインについては、対面でのユーザー調査で質問しても、「なんとなく良い」「なんとなく好き」といった感覚的な回答になることがほとんどです。もともとデザインは抽象的なものなので、ある意味それは自然な反応だと思っています。私たちは、ユーザーの属性や置かれている状況、購入に至った背景、日々の暮らしなどからアイデアやヒントを得てデザインに落とし込んでいくので、DAYS GRAPHYで背景情報やエピソードを得られることはとても有意義だと考えています。

シナジーマーケティング 阪口:
デザインという観点では、DAYS GRAPHYの顧客像に日常生活のエピソードを語ってもらうなかで、「たとえば、こんな形状のものがあったらうれしい」というイメージを画像で表示し、それをもとに会話しながらデザインに取り入れるべき要素を取捨選択していく、といったフローが適しているかもしれません。人間相手のインタビューでは絶対にできないことですが、そこは生成AIならではのポイントです。既にDAYS GRAPHYにも画像を入力して質問をする機能があるので、意図した画像を出力させるための質問方法や画像生成の精度も含めて、さらにブラッシュアップしていきたいと考えています。ほかにもご要望がありましたら、お伺いできると幸いです。

象印マホービン 遠藤:
アプリ化していただけたらうれしいです。移動中の電車内などの隙間時間、ヒアリング項目を思いついたタイミングですぐに質問ができるようになれば、今よりもさらに業務効率性や利便性が高まります。あとは、音声入力ですね。声でのやりとりができるとリアルのユーザーインタビューに近い感覚が生まれ、より一層活発なコミュニケーションができるように思うので、こちらも期待しています。

シナジーマーケティング 阪口:
ありがとうございます。アプリ化や音声入力機能の実装についても、検討させていただきます。

業績向上の鍵は「人間と生成AIの適切な役割分担」にあり

―― 先ほど「生成AIを活用した顧客理解は、業績向上のためのなくてはならない手法になり得る」とのお話がありましたが、特に一般消費者向けの商品において、近年、顧客理解を外部パートナー任せにするのではなく、自社で積極的に取り組もうという動きが加速しているように感じます。

象印マホービン 岡島:
そうですね。生活スタイルの多様化が急速に進んだことが要因のひとつだと思います。当社はもともと顧客理解を非常に重視する文化ですが、それでも年々、顧客の潜在ニーズを捉える難易度が増していると感じています。これは弊社だけでなく、業界全体が感じていることだと思います。最近、リアルでのユーザー調査をしようとしても会場が予約で埋まっていて、希望するタイミングでの調査実施が難しいといったケースも増えてきていますので。

シナジーマーケティング 奥平:
当社は多くの企業様に対してデジタルマーケティング領域のご支援をさせていただいていますが、業界問わず、顕在化してきている課題だと感じています。「いかにして顧客の本質的なニーズや価値観を把握し、それを商品やサービス、コミュニケーションに落とし込めるか」が今後の企業成長の鍵になってくると予測しています。この流れは今後も加速するので、自社内で効果的に顧客理解を行う能力を培う重要性はますます高まっていくでしょう。

象印マホービン 岡島:
そのような課題に対して、私たちはDAYS GRAPHYを導入したことで、ユーザーの声を拾う機会を増やせている実感があります。拾った声を最大限活かし、新たなアイデアの創出やアイデアを形にするプロセスの効率化の目処も、ある程度ついてきています。効率化によって生まれた余剰時間をデザインの精査やブラッシュアップに費やせるようになると、商品の完成度をより向上させることができます。シナジーマーケティングさんの力も借りながら、ぜひ実現したいですね。

シナジーマーケティング 多久:
現在、当社では「生成AIをどこまで業務に活用するべきか」「人間の役割をどの業務に残すべきか」というテーマについて議論を重ねています。なかでも商品開発、とりわけデザイン分野においては、試行錯誤を重ねながら、より良いプロセスを模索している状況です。生成AI技術の活用によって、商品開発プロセスの効率化や商品の品質向上など、さまざまな可能性が広がると期待しています。その実現に向けて、DAYS GRAPHYに順次必要な機能を実装していく予定です。ぜひ象印マホービン様の豊富な知見もお借りできたらうれしく思います。

シナジーマーケティング 阪口:
人間と生成AIはそれぞれ得意とする領域が異なるため、適切に組み合わせることで、より大きな成果を生み出せると考えています。課題解決の思考法として知られる「ダブルダイヤモンド※2 」という手法を例に説明します。この手法では、「課題を洗い出すために幅広く情報を収集する(広げる)」→「集めた情報をもとに課題を絞り込む(狭める)」→「解決策を幅広く検討する(広げる)」→「最適解を選ぶ(狭める)」というプロセスをたどって答えを導きます。しかし、人間は「(発想を)広げる」というフェーズを苦手とする傾向があります。くわえて、日常の業務に追われているビジネスパーソンにとって、考えを広げるための時間的・精神的余裕を確保するのは容易ではありません。

一方で、生成AIは「広げる」工程を得意とします。人間と生成AIの役割分担を適切に行う、つまり「生成AIの力で発想を広げ、人間の力でアイデアを収束させる」といった分担ができれば、リサーチや商品企画の質を飛躍的に向上させられる可能性があります。DAYS GRAPHYでは、この「広げる」領域において高い価値を提供し、商品企画プロセスの改善をより深くご支援できるように、これからも注力していきます。

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※2 デザインプロセスのフレームワーク。問題解決や製品・サービスの開発を体系的に進める際の手法で、問題解決プロセスにおいて「収束」と「発散」を繰り返す。

シナジーマーケティング 奥平:
私たちは、ただ技術やシステムを提供するのではなく、企業が抱える課題に寄り添い、現場に即した解決策を提案することを大切にしています。DAYS GRAPHYの提供もその一環です。マーケティングや商品企画における業務効率化や体制構築などをご支援し、顧客や企業戦略といった本質的なテーマに最大限向き合える時間を創出することで、企業様のさらなる成長をお手伝いしたいと考えています。

岡島様や月田様のお話しにもありましたが、今までになく変化のスピードが速い時代に私たちはいます。世の中のスタンダードとされる手法や価値観、顧客ニーズは急速に移り変わり、それに紐づく課題や課題解決策もまた変化を続けています。かつてメールマーケティングや業務でのモバイル活用が急速に普及して当たり前の存在になったように、近い未来、あらゆる業務にAIが組み込まれる時代が訪れるでしょう。

私たちは、創業以来25年に渡ってCRM領域のご支援をしてきたことで培った顧客理解の知見を活かし、お客様の課題を深く理解したうえで解決策を提案することを得意としています。この時流にも対応すべく、DAYS GRAPHYを通じて、いただいた皆さまからの貴重なご意見をもとに、人間の創造性と生成AIの特性を融合させた新しい課題解決のアプローチを追求していきたいと考えています。この取り組みによって、お客様にとってより価値ある提案を実現し、AIを活用したビジネス革新を支援し続けることができるように全力で取り組んでまいります。企業様の持続的な成長を支えるパートナーとして、これからも共に歩みを進めてまいりますので、ご期待いただけましたら幸いです。

(取材/編集:経営推進部 ブランドマネジメントチーム)

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